2024年04月19日 1818号

【読書室/いま沖縄をどう語るか ジャーナリズムの現場から/新崎盛吾ほか著 高文研 1800円(税込1980円)/報道現場で国のありようを問う】

 本書は、法政大学沖縄文化研究所が2022年に開催した沖縄復帰50周年記念シンポジウムの講演をもとに、ジャーナリストらが沖縄の現実とこの国のありようを問いかけたものである。

 松元剛は琉球新報記者として基地問題を報じてきた。新報は復帰50年特別号で、復帰当日の1972年5月15日付朝刊1面を掲載した。そこには「変わらぬ基地 続く苦悩」の大見出しがおどる。紙面で「いま日本を問う」となお変わらぬ沖縄の現実を報じ、「復帰」そのものの問題点を示した。

 沖縄タイムスの女性記者の草分けである謝花直美は「生活に根ざした『小さな声』を報じる報道」の重要性を訴える。戦後の復興期、「戦争未亡人」や「戦災孤児」の女性たちがミシンで米軍物資を使い衣類を縫いはじめた。その時の衣類こそ「かりゆしウェア」につながる。埋もれていた女性の視点で沖縄の戦後史をとらえることを主張する。

 NHKでドキュメンタリー番組を多く取り上げてきた鎌倉英也は「沖縄リテラシー(理解力)」を語る。明治の琉球処分以来、沖縄が「本土」の犠牲とされてきた歴史を踏まえなければ、現在の沖縄の基地問題を理解できない。リテラシーの核心は「構造的差別」の意味を認識することだと言う。

 沖縄県民は復帰後50年間変わらず米軍基地撤去を求め、今また自衛隊による要塞化に島ぐるみで反対の声をあげ続けている。本書は、「本土」の人びとは基地の過重負担など「見たくない沖縄」から目をそらしてきたのではないか、「見たくない沖縄」をそもそも知らない人も増えているのではないかと指摘する。それは、この国の民主主義を問いなおすことでもある。(N)
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