2024年05月03日 1820号

【たんぽぽのように(32)/韓国総選挙の結果/李真革】

 4月10日に行われた韓国の総選挙は67・0%の投票率で野党の圧勝に終わった。

 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領への批判的意見が多く支持率があまりにも低い中で、この67・0%の投票率は、2000年以降に行われた6度の総選挙で最も高い数字だ。年齢別・性別の投票率は公表されていないが、出口調査の結果では各世代、男女で与党批判傾向は変わらなかった。韓国市民が社会を変えるために投票を行っていることが、今一度明らかになったと言ってよいだろう。

 メディアでも与党の勝利を期待するのは難しい選挙だと言われていた。尹大統領に批判的な野党全体の議席は総数300の3分の2に近く、190を超えた。

 議席数を見ると、与党「国民の力」は衛星政党(注)の「国民の未来」を含め108議席、最大野党「共に民主党」は同175議席、今選挙の直前に作られた比例代表だけの政党「祖国革新党」は12議席、与党から分かれた「改革新党」は3議席、最大野党から分かれた「新しい未来」が1議席、そして「進歩党」1議席となった。

 「国会議員選挙で1人1票制を採択しつつ、地域区で獲得した得票比率により全国区議席を配分することは違憲」という2001年の憲法裁判所の決定で「政党名簿比例代表、1人2票制」が導入され、進歩政党である「民主労働党」が2004年には初めて10議席を持った。現在の「緑色正義党」に続くものだが、今回議席が全部なくなった。

 衛星政党は、前回の2020年総選挙から導入された「準連動型比例代表制」に基づくが、実際には多様な政治勢力が国会に入れるという当初の目的に反する制度だ。最悪の「尹政権への審判」はもちろん必要だが、最も重要なのは、社会の変革につながる政治の多様化・多元化だと思う。

 今後の韓国の政治状況はどうなるかとの問いには現時点では答えにくい。だが、政治や社会問題に関心を持つ市民がこのように多数であり、新しい政治への希望と第三極を作るのは社会変革をめざす我々の責任だと言いたい。

(筆者は市民活動家、京都在住)

(注)衛星政党 比例代表選挙(定数47)で、二大政党「国民の力」「共に民主党」を名のらない小政党だが、当選後は二大政党の補完政党となるもの。今回比例区では、ともに不評である二大政党の立候補がない異常な事態となった。
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