2024年05月17日 1821号

【4・28衆院補選 自民全敗、維新も惨敗/自民党的政治に世論はノー】

 4月28日に投開票された衆議院3選挙区の補欠選挙で、自民党は「不戦敗」を含めて全敗を喫した。自民票の取り込みを狙った日本維新の会も惨敗した。岸田政権、自民党、その補完勢力のいずれもが、有権者に退場勧告を突きつけられたということだ。

保守王国で完敗

 与野党直接対決となった島根1区補選は自民の細田博之前衆院議長の死去に伴う。細田は裏金問題の震源地である安倍派の会長だった。とはいえ「弔い選挙」となれば自民有利は動かないとの見方もあった。しかも島根県は小選挙区制が導入されて以降、全国で唯一、自民党が議席を独占してきた「保守王国」だ。

 しかし結果は立憲民主党公認の亀井亜紀子候補が約8万3千票で当選。自民公認で公明推薦の錦織功政候補は約5万8千票で、大差をつけられた。ある自民中堅議員は「自民党にとって一番盤石だった島根という砦で完敗したというのは、単純に言えば全国ほとんどすべての選挙区で負けるということでしょ。大変な衝撃ですよ」(4/29ANN配信記事)と嘆く。

 読売新聞が実施した出口調査によると、投票の際に自民党の裏金問題を判断材料にしたという人が約7割いた。このうち亀井候補に投票した人が75%にのぼり、錦織候補の24%を大きく上回った。また、岸田内閣を支持しないと答えた人は67%で、亀井候補はその8割を固めた。全国屈指の「保守王国」島根でも、岸田政権離れや自民離れが進んでいたことがわかる。

 理由は裏金問題だけではない。長年自民党を支持してきた松江市の自営業男性(86)は「自分らのことだけでなく、物価高で苦しむわしら貧乏人のことも考えてほしい」と思い、亀井候補に投票した(4/28朝日配信記事)。同市の主婦(75)も「周囲に合わせて何となく自民に投票してきた。生活が苦しくなっていく中で国民目線とほど遠い政治をしている。今回は変えないといけない」と話す(4/28毎日配信記事)。

 このように、物価高などによる生活困窮に無為無策な岸田政権や自民党に対し、人びとの怒りが高まっていたことが「不敗神話」崩壊の根底にある。前述の自民議員が認めるように、それが全国共通の現象であることは言うまでもない。

拒絶された維新

 ともに自民前職の「不祥事辞職」に起因する東京15区と長崎3区の補選において、自民党は公認候補を立てることすらできなかった。そこで自民票に照準を定めて選挙戦を展開したのが日本維新の会である。

 維新の馬場伸幸代表は街頭演説で「立憲民主党を叩きつぶす」「共産党は日本にいらない」など、立憲や立憲候補を支援する共産への攻撃をくり返した。だが、叩きつぶされたのは維新のほうだった。

 東京15区では立憲の公認候補に2万票以上引き離されて完敗。投票率の減少があったとはいえ、同じ候補者が2021年の衆院選で獲得した票数より1万6千票も減らした。立憲公認候補との一騎打ちとなった長崎3区ではダブルスコアで惨敗を喫した。自民党政治の継続に嫌気がさしていた有権者は、代表自ら「第二自民党でいい」と語る維新も拒絶したのである。

 東京15区で、国民民主党と都民ファーストの会が推薦する候補が5位に沈んだのも同じ理由である。しょせんは自民の補完勢力にすぎないことを有権者に見透かされていた。

 維新敗北のもう一つの理由は、大阪・関西万博をめぐる迷走により「身を切る改革」の嘘がバレたからである。パワハラを受けて維新の会を離れた長崎市議はこう語る。「ケチの付き始めはなんといっても万博開催ではないでしょうか。最初の予算を遥かに超える予算を計上して批判を浴びましたが、維新の会が先頭を切って誘致を成功させたのに、いまでは万博誘致の実績について口をつぐんでいる有様です」

民意は政権交代

 毎日新聞の世論調査(4/20、4/21実施)によると、次の衆院選で「政権交代してほしい」との回答が62%にのぼった(「してほしくない」は24%)。今回の衆院補選における自民全敗の理由はこれに尽きる。維新のような自民補完勢力も正体を見抜かれ、共倒れした。自民党的な政治を終わらせることを人びとは求めているということだ。

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