2024年05月17日 1821号

【みるよむ(695)/2024年4月27日配信/イラクの下水道労働者/その過酷な労働現場】

 イラクの下水道労働者は、過酷な労働現場で、市民生活に不可欠な下水設備維持のために働いている。2024年2月、サナテレビはその現場を取材した。

 まず、イラク労働者の全体状況はどのようなものか。それは、「長時間労働と低賃金」「労働時間を明確に規制する法律の欠如」というものであり、労働者の生活は苦しい。「労働時間と賃金、休暇の付与」は経営側の意思ですべて決まる。労働者の権利も認められず、権利を要求する仕組みも整っていない。

 そうした中で、番組は下水道労働者に焦点を当てる。

 ある労働者は、下水の中で詰まっている沈殿物をそのまま素潜りをして取り出している。

 イラクは夏季には気温が50度にもなる。この環境、特に人口が密集する地域で、下水は市民の健康と命を守るために絶対必要だ。下水設備を維持管理する仕事は重要な仕事だ。しかし、そこで働く労働者は「酸素不足、有毒化学物質の存在、水中での溺死」に結びつく健康・安全面での劣悪な労働環境に置かれている。

死亡事故さえ次々と

 「強いメタンガス」が出る深い場所に、マスクさえなしに入らざるを得ないという場面も出てくる。「ある下水道ピット(作業スペース)では、作業中に窒息死した者もいる」「カルバラ市で、3人のイラク人労働者が下水道の清掃中に死亡した」との例もある。

 このように、市民生活にとって重要でかつ危険な労働であるにもかかわらず、賃金は日本円にして月に3万円から3万6000円に過ぎない。

 イラクの下水道事業を支えている下水道労働者は、臨時雇用の待遇であり、低賃金と、命や健康を危険にさらす過酷な労働条件が押し付けられている。サナテレビは、こうした実態を明らかにし、労働者の命と暮らしを守り、権利を要求して闘おうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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