2024年05月24日 1822号

【戦争する国づくり法案が次々成立/次期戦闘機共同開発で死の商人≠ノ】

 裏金問題に焦点があてられる国会で、日本を戦争する国へと造り変える重要法案がほとんど審議されないまま次々と成立している。米軍と自衛隊の一体化(米軍指揮下に入ること)を進める統合司令部設置のための自衛隊設置法改定案、軍事機密保護を口実に身辺調査を合法化する経済安保秘密保護法案が5月10日、成立してしまった。

制約なき武器輸出

 現在審議中の次期戦闘機を共同開発する3か国合同政府機関設置のための条約の承認も、戦争国家づくりの一つだ(5/14衆院可決)。条約は日英伊3か国が国際機関(GIGO)を設置するためのもので、「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP)の2035年完了をめざし、GIGOは軍需産業と契約をかわす法人となる。23年12月、政府間の署名が終わり、各国での承認待ちの状態だ。

 問題は、「次期戦闘機の共同開発」を契機に、殺傷兵器販売の制約を取り払うと共に、武器開発へ湯水のごとく予算をつぎ込む軍事経済へ加速することになる点だ。

 「原則禁止」だった武器輸出を安倍政権が解禁し、岸田政権が実行してきた。23年12月、三菱重工がライセンス生産をするパトリオットミサイルを米国に輸出することを認めたのもその一つだ。それまで、部品に限って認めていた制約を取り払った。

 米国政府からの要請に応えたもので、これにより米国はウクライナ支援に手持ちのパトリオットを送ることができるという。日本製が直接ウクライナに輸出されるのではないにしても、紛争国への殺傷兵器の輸出に一役買うことになる。「平和主義政策からの転換」(3/26BBC)というのが海外メディアの評価だ。

 今回の戦闘機の共同開発も、岸田政権は殺傷兵器の第3国輸出禁止のハードルを取り払う契機にした。開発した戦闘機が日本だけが他国に売れないようでは「今後、効果的・効率的な防衛力整備にも支障をきたす恐れがあり国益に反する」(政府資料)とまで言っている。戦闘機に限った話ではない。要は「武器商売の何が悪い」と言いたいのだ。

 野党から武器輸出について「与党の密室協議だけで転換せず、国会で基本政策をまとめるべき」(4/25衆院本会議)と問われても政府は「行政権の裁量」(木原稔防衛大臣)と取り合わない。もはや何の制約もないに等しい。

武器開発費は青天井

 第6世代の戦闘機をめざすGCAPは1兆円を軽く超える開発費が必要と言われているものの、総額も各国の負担割合も公表されていない。完成するまで青天井ということだ。

 第6世代とはステルス性能(第5世代)の上に、複数機の無人機を制御しチームとして攻撃する能力を有するものを想定している。独・仏・スペイン3か国も共同開発を進めている。米国は単独で開発、30年には実用配備する。ロシア、中国は一歩先を行っている。

 ロシア、中国、米国以外、第5世代の製造実績がないなかで、日欧の企業が実際に開発できるのか、完成できたとしてその価格はいくらになるのか。5機種が競合して、奪い合うだけの市場はあるのか。「商売」として成り立つためには、市場を拡げること、つまり大量の戦闘機群を配備しなければならないほどの軍事緊張を継続する必要に迫られるということだ。

 政府は軍事費を23年から5年間で総額43兆円にする防衛力整備計画を作った。米国から爆買いする兵器価格を1ドル108円で換算したものだ。現在1ドル150円台後半の円安が続いている。43兆円は大きく膨れ上がるのは間違いない。経済はますます軍事優先になっていく。


経済安保秘密保護法案の参院内閣委員会採決に抗議する市民。海渡雄一弁護士(左端)は「法の詳細はすべて『運用基準』に委ねられる。そこにわれわれはもう一度立ちふさがろう。法案に賛成した立憲民主党が立てる候補者には『政権交代したら特定秘密保護法も経済秘密保護法も廃止する』と約束させよう」と呼びかけている。(5月9日・参院議員会館前)
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