2024年05月24日 1822号

【訪問介護報酬引き下げ撤回署名を/小規模事業所つぶしを止めよう】

 2024年度から第9期の介護保険事業計画がスタートした。政府がもくろんだ要介護1、要介護2の保険対象外しとケアプランの有料化などは運動の力で見送らせた。一方、介護報酬のわずかな引き上げと共に訪問介護報酬の引き下げが行われた。これが問題だ。

賃上げ保障の制度を

 介護報酬は1・59%引き上げ。介護職員の処遇改善はわずか0・98%に過ぎない。これにより24年度で月約7500円、25年度は月約6000円のベースアップが期待されている。しかし、これでは全職種平均と比べ月額約7万円低い介護職員賃金の抜本的改善にはつながない。その上、引き上げには一定の条件と煩雑な申請手続きが必須だ。人手がなく申請書類作成の余裕がない小規模事業所は引き上げ断念を余儀なくされる。

 介護職、特にホームヘルパー不足を解消するためには、国費で賃上げを保障する制度改革が必要だ。

ヘルパー不足必至

 一方、訪問介護については大幅な引き下げがされた。例えば、身体介護20分以上30分未満は250単位(1単位は10円)が244単位に2・4%減、生活援助45分以上は225単位から220単位に2・2%減となる(表)。




 政府は、訪問介護サービスは平均7・8%の黒字で、全介護サービス平均の2・4%を大きく上回っていると理由づけるが、実態はまったく違う。「都市部の大手事業所や、サービス付き高齢者向け住宅といった集合住宅に併設され効率よく訪問する事業所が平均値を押し上げた形だが、中小事業所は赤字に陥っている」(3/11朝日)。訪問介護報酬には利用者宅訪問に要する時間は入っていないのだ。

 厚生労働省の調査でも22年度は36・7%の事業所が赤字、23年には訪問介護事業所の倒産は67件と過去最高になっている。

 新潟県社会保障推進協議会などが実施した調査では「24%が事業継続が難しくなる。(処遇改善加算引き上げで)改善が見込まれるとの回答は1%」だった。

 厚労省は、訪問介護報酬を引き下げても介護報酬の引き上げで全体としてプラスだと言うが、経営改善につながらず小規模事業所は経営が行き詰まりホームヘルパーの確保も困難になる。

 今回の報酬改定は小規模訪問介護事業所を事業縮小・廃業・倒産に追いやるものだ。決定的に不足しているホームヘルパーは確保どころかその不足は一層深刻化するだろう。

職員確保は国の責任

 40年には69万人のホームヘルパーの増員が必要だと言われるが、実現は不可能。介護崩壊が目に見えている。国は、訪問介護を資格のないボランティアで対応できるよう、要介護1、2対象者の介護保険を外すつもりだ。小規模事業所はますます成り立たなくなる。

 必要な人に必要な介護支援ができなくなる訪問介護報酬引き下げの撤回に向けて、市民団体「尊厳ある暮らしを連絡会」は厚労省への署名運動を開始した。

 要請項目は以下の通りだ。

 (1)訪問介護事業所の経営実態を調査し、経営危機の事業所への支援策を早急に具体化すること(2)訪問介報酬引き下げを撤回し、報酬を引き上げること(3)介護職特にホームヘルパーの賃金を全職種平均並みに大幅に引き上げる、そのため、国費を投入すること(4)介護保険料の引き上げをしないために、市区町村の一般財源からの繰入を認めること(5)現在25%の国の負担割合を倍増すること。

(署名連絡先―手塚隆寛 080-1509-0706/tezutakahiro@yahoo.co.jp)
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