2024年05月24日 1822号

【DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)ニックのアメリカレポート/労働条件と患者の医療を結び ストで勝利した医療労働者】

 昨年11月14日、ワシントン州スノホミッシュ郡最大の病院の医療従事者1万3千人が24年ぶりにストライキを行った。労働条件の改善を求めストを行う一方で、患者に対するケアの改善を求めても闘っていた。

 プロビデンス・リージョナル・メディカル・センター(PRMC)はスノホミッシュ郡最大の病院であり、郡庁所在地のエベレット市で2番目に従業員の多い事業体だ。PRMCは、米国西部で50以上の病院を擁するカトリックの医療機関プロビデンス・ヘルス&サービスが運営する。プロビデンスは表面上は非営利の医療機関だが、ワシントン州で最も高給の病院幹部である同病院のCEOは、2021年に950万ドル(約15億円)の報酬を得たと地元経済紙が報じている。

 病院の看護師は、低賃金、人員不足と闘ってきた。PRMCの看護師の賃金は地域の他の病院よりも低く、新規採用や古いスタッフの維持が困難になっている。 2019年以来、PRMCでは600人以上の看護師が辞め、100床の閉鎖を余儀なくされた。病院の人員不足は看護師の過重労働をもたらし、患者へのケアの質の低下につながる。

 PRMCの看護師は、より良い強力な労働契約を求めて闘う中で、自らの労働条件と患者への医療を直接結び付けた。彼・彼女らは自分たちのためだけでなく、私たち全員のためにストライキを行ったのである。

数か月の準備でDSAも

 PRMCの看護師は、北米で130万人以上の労働者を代表する全米食品商業労働組合(UFCW)の傘下にあるUFCW3000の象徴的存在となっている。ワシントン州最大の組合UFCW3000は、UFCW内でより急進的で改革志向の組合だ。積極的に新しい職場の組織化に挑み、ストライキなどの戦略を追求している。また、UFCW3000は、米国の組合の中で最初にガザでの停戦を呼びかけた組合であり、全米電気・無線・機械労働者組合(UE)と共に声明を出し、現在200以上もの組合が署名している。

 看護師たちは10月の契約満了に向けて何か月も前から準備を進めていた。繁華街で横断幕を掲げ、ビラを配り、戸別訪問を行い、地域住民や患者に、自分たちがより良い労働条件と患者の安全のために闘っていることを知らせるために対話集会を開催するなどの活動を、ストライキ決行の数か月前から行った。

 私の所属するDSAスノホミッシュ郡支部が活動に加わったのもこの運動を通してだ。看護師たちはUFCW3000のスタッフとともに、私たちの支部会議にまで参加して直接話し、私たちの協力を求めた。支部メンバーは看護師たちの地域活動に参加し、また、エベレット市内の事業者を訪問して各店舗にPRMC看護師を支援する看板を掲げるように依頼した。

スト決行で20%超賃上げ

 看護師たちは11月14日午前6時にストライキを決行した。5日間、病院でピケをはり、外では毎日地域の労働者とともにデモ行進した。組合はスト中に集会を開き、何百人もの労働者と支援者が参加した。

 UFCW3000のフェイ・グンサー会長はこう宣言した。「医療従事者は破綻した医療制度の内部告発者だ。利益を患者よりも優先する制度、愛する看護師を使い果たして捨て、新しい看護師が玄関口にやって来るのをただ願うだけでは完全に持続不可能であるとの事実を無視している制度。もうたくさんだ!」

 10か月の交渉の後、看護師たちはついに労働者側に有利な契約を勝ち取り、2月、承認に票を投じた。勝ち取った契約には、3年間で21・5%の賃金上昇と人員不足のシフトに従事する際の報酬増が含まれていた。病院はまた、地域の平均賃金に合わせて毎年賃金を見直し、調整することが義務付けられた。人員問題が3か月以上続く場合、病院と組合は外部の調停者と会談し、その調停者が病院に提案を行うことが契約で義務付けられている。

 この契約は2026年10月までだが、その年の3月から交渉を始めることができる。UFCW3000のスタッフによれば、目標は、地域の医療従事者と連携して交渉し、必要な場合には一緒にストライキを行えるようにすることだという。

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 PRMCの看護師たちの労働は、今回の契約よりはるかに良い待遇に値するとはいえ、集団で労働を拒否する力を使うことで雇用主から大きな譲歩を勝ち取り、すべての人にとってより良い医療制度の構築に向けて前進することができた。





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