2024年05月24日 1822号

【「共同親権」は子どもの利益にはならない/当事者置き去りの民法改定案に反対/OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉代表山本よし子大阪府茨木市議】

 離婚後も父と母の双方が親権を持つことができる「共同親権」を導入する民法「改正」案が今国会で成立させられようとしている。 親権とは、未成年の子どもを育てる親としての権利と義務のことを指す。民法で生活の世話(監護)や子どもの財産を管理するこという。現在の民法では、結婚しておれば親権者は父母双方にあるが、離婚した後は父母のどちらかに定める「単独親権」とされている。

 制度見直しが論議された理由の一つが、別居の親と子の面会交流をやりやすくしようというものだ。しかし、交流できるかどうかは親権とは関係ない。家庭内暴力DVや虐待が離婚後にも及ぶことを防げるかが問題だ。改定案では、DVや虐待があった場合は家庭裁判所が単独親権に変更できるようにした。だがDVなどを立証することは困難な場合が多く、「面会交流」を通した被害を防止できないこともある。親とは会いたくないと思う子どももおり、その最善の利益が優先されなければならない。

 また「共同親権にしたら養育費支払いが確実になるのでは」との期待もある。単独親権であっても親子関係は消滅せず、養育費の支払い義務はある。共同親権になったからと言って、必ず払わせられる保証はない。

 「共同親権」の導入で、多くの問題が起こる。

 所得制限のある公的支援では、「共同親権」の場合、父と母の所得が合算されるため支援を受けられなくなる場合が出てくる。就学援助制度や高校無償化など28件もの事案が関係する。

DV被害者を置き去り

 未成年者の雇用契約や進路先の決定にも「共同親権者」の双方の同意が求められる。父と母の意見がちがえば、進路先も決められないことも起こりえる。医療の現場では、子どもの医療行為への同意を親権者に求めることがある。双方の同意が得られず、医療行為が遅れ命にかかわる重大な問題が発生しかねない。

 このように「共同親権」は子どもの利益にはならない。DV当事者をはじめ「共同親権」導入に反対する運動は、短期間で大きく広がっている。ネットでの反対署名は23万を超えた。反対を求める院内集会(4/23)で、夫からの虐待を受けて離婚した女性は「相手に居場所が常に知られることは当事者にとって恐怖以外のなにものでもない」と導入の反対を訴えた。当事者置き去りの「共同親権」を盛り込んだ民法改定案は、廃案に追い込もう。

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