2024年05月24日 1822号

【未来への責任(398) 動き出す長生炭鉱の遺骨収集】

 山口県宇部市の長生(ちょうせい)炭鉱の遺骨収集活動が動き出します。水没事故から82年目の今年、ついに陸にある海底炭鉱の坑口を開けます。

 7月15日には長生炭鉱のピーヤと呼ばれる2本の排気塔が見える海岸で「みんなの力で坑口を開けよう!スタート集会」が開催されます。午後2時から始まるスタート集会には韓国からご遺族も参加します。30分の集会では遺族が海のピーヤの下に眠るご家族に向かって挨拶をし、長生炭鉱の「水非常」を歴史に刻む会が今年秋に坑口を開ける決意を述べます。その後、集まったボランティアにより陸にある炭鉱坑口とみられる周辺の清掃・草木の伐採など工事の準備が2時間おこなわれます。たくさんの中高生たちも参加予定です。

 2004年に当時の廬武鉉(ノムヒョン)大統領と小泉総理が徴用工の遺骨返還の約束をしました。にもかかわらず、厚生労働省は長生炭鉱について、「見えない遺骨」で約束した現実主義ではない、遺骨の深度や位置がわからず調査は困難という立場を変えていません。しかし、韓国政府がこの炭鉱の遺骨問題の解決を何度も日本政府に求めている時点で長生炭鉱の遺骨発掘は対象外という日本政府の理屈は崩れています。

 遺骨返還の取り組みはどんどん拡大しています。昨年5月には国会で沖縄の風・高良鉄美参院議員により30年ぶりの質疑が行われ、昨年12月8日には初めて韓国遺族が参加した大規模な政府交渉を実現しました。昨年の政府交渉と今年2月3日の追悼集会を前後し、日韓のマスコミに何度も大きく取り上げられました。韓国の国会議員により長生炭鉱の写真展が韓国国会議員会館で開催されました。今年3月には社民党・大椿ゆうこ参院議員により初めて政府に遺骨発掘を求める質疑が実現しました。

 厚労省は調査について、技術的議論など交渉は続けると言っています。刻む会は、まず民間の力で坑口を開けて政府が水中ドローンなどの遺骨調査に協力せざるを得ない状況を作り出そうとしています。今年坑口が開けば、183名(うち朝鮮人136名)の眠る海底炭鉱に82年ぶりに地上の光が差し込みます。遺骨調査も可能になります。

 まずは多額の工事・事業費が必要です。歴史的なスタート集会への参加と寄付を皆様にお願いしたいと思います。参加は同会HPを参照してください。寄付は下記へ!

     (上田慶司)

◆郵便振替 01590-7-32405 名義―長生炭鉱の「水非常」を歴史に刻む会(備考欄に坑口カンパとお書きください)

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