2024年05月24日 1822号

【議会を変える、市民と変える/京都府向日市議/杉谷伸夫/市民不在の1万人アリーナ建設計画】

 西日本一小さな市である向日(むこう)市に、京都府最大のアリーナを造る計画を府が発表し、向日市が揺れている。このアリーナは、国内外の大きなスポーツ大会の他、各種イベント開催などを想定した大規模観客席付き施設だ。

 京都府は府立植物園に隣接する京都府立大学内に、1万人規模のアリーナを建設する構想を数年前から示していた。しかし、環境悪化を懸念する市民や府立大学側の反対で進まない中で、老朽化した向日町競輪場(京都府が所有・運営)の再整備地内に建設する構想がにわかに出てきた。そして昨年、向日市長が誘致の意向を表明、今年3月に知事が設置方針を発表、4月に8千人以上の規模で2028年度完成目標が示され、5月初めに建設・運営事業者の募集開始と一気に進んでいる。

 何が問題か。市内の道路はメイン道路でも極めて狭い。すべて片側一車線しかなく、歩道も狭い。こんな所に1万人近い来場者が一気に押し寄せたらどうなるか。かつて向日町競輪場の最盛期を知る市民は、その頃の大変な状況を知っている。市内の道路は大渋滞し、駅に向かう道は歩行者が溢れ、住民とのトラブルも頻発していた。また、競輪場の南側には閑静な住宅地が接している。その隣に高さ30メートルの巨大な施設が出現することになる。

 こうした中で、市民有志が「向日町競輪場再整備とアリーナ問題を考える会」をつくり、京都府や向日市に住民説明や諸課題に対する考えを求めてきた。向日市民がどう考え何を求めているかを明らかにするため、4月末から市民アンケートを始めた。市民の意見で最も多かったのが、「情報提供がなく、市民の声が反映されていない」だった。

 競輪場再整備地にアリーナをつくる計画は、向日市民の声は一切聞かれないままに、あれよあれよという間に決定されてしまった。京都府の土地に京都府がつくる施設だが、地元向日市民が余りに軽視されている。また小さな向日市の中心部に巨大な集客施設が建設されれば、生活環境に大きな影響を及ぼすことは明らかなのに、地元向日市民の意見を聞き反映する仕組みは全く示されていない。「市民不在の施設計画」に対する向日市民の不満の声だ。

 5月末から向日市議会の定例会が始まる。市長に対し「向日市の問題」として主体性と責任をもって市民の声に応えることを求めてゆきたい。
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