2024年05月31日 1823号

【沖縄 基地負担増続く 全国でも増強/反基地運動をつなぐネットワークを】

 「基地負担軽減」―沖縄県民の要求を踏みにじり、基地の規模・機能が拡大・強化されている。

 普天間飛行場の閉鎖・返還に日米政府が合意してから既に29年間。閉鎖はおろか軍用機の離発着は一層激しくなっている。辺野古新基地は防衛省自身が完成のめども示せないまま、豊かな環境を破壊している。

沖縄に続く北九州

 米軍基地が縮小しない中で、自衛隊基地の拡張が急激に進んでいる。沖縄における日米の軍事施設の面積は2018年から5年で56f増えた。自衛隊基地の拡大は、日本の施政権下(1972年以来)で、約4・9倍にもなっている。琉球弧の島々へのミサイル基地増設など基地負担はますます重くなっているのだ。



 だが、自衛隊基地の拡充は沖縄だけではない。全国の自衛隊基地が「強靭化」の増強工事を行っている。民間施設まで「特定利用施設」の指定を行い、軍用化へ改造を進めている。

 その1例が「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝沖縄戦の会」メルマガ(5月7日第251号)で紹介されている。『激変していく北部九州の実態』。筆者は「辺野古土砂ストップ北九州」の八記(やつき)久美子さん。前身である「辺野古埋め立て土砂搬出反対北九州連絡協議会」の発起人の一人だ。

 「特定利用空港」に指定された北九州空港(国の管理)。九州で唯一24時間使える人工島の空港だ。今年度末までに、海上自衛隊と連携する海上保安庁の無人偵察機「シーガーディアン」3機が青森から移転、最終的に5機になるという。


日米共同使用進む

 航空自衛隊の築城(ついき)基地(福岡)と新田原(にゅうたばる)基地(宮崎)は、「普天間飛行場返還8条件」(13年日米政府合意)の一つ、米軍の緊急時使用のために整備することにしていた。築城基地はすでに、自衛隊と米軍共用庁舎(地上3階・地下1階。地下に自衛隊用指揮所機能あり)や米軍専用庁舎、弾薬庫・燃料タンクなどが完成。22年12月に米軍に引き渡され、共同訓練に使われている。さらに2400bの滑走路を2700bに延長する。

 陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地(長崎)に「日本版海兵隊」とも言われる陸上自衛隊の「水陸機動団」が18年3月に創設された。現在、連隊が3つ、3000人規模になっている。いずれも暫定配置とされ、このうち1連隊は辺野古新基地を米海兵隊と共同利用する「密約」が暴露されている(21年共同通信)。

 佐賀では今、県営佐賀空港横に水陸機動団を南西諸島へ輸送するための駐屯地、駐機場や兵舎を造ろうとしている。木更津駐屯地(千葉)に暫定整備されているオスプレイ14機と製造中の3機、合計17機が揃う。政府は25年6月末完成をめざし、休日も含む24時間体制で工事を行っているという。佐賀空港は「特定利用空港」に指定されていないが、自衛隊共用を狙っているのは明らかだ。

 八記さんは、辺野古埋め立て土砂搬出を「全国の仲間とつながって」阻止できたことを教訓に「特定利用空港・港湾の指定問題も各地域がつながることで、何かが見えてくる」と結んでいる。沖縄をはじめ日本列島の軍事基地化を阻止するために、全国をつなぐ反戦反基地のネットワークが求められている。



   *  *  *

 5月15日は、52年前(72年)、沖縄が米軍統治から日本の施政権下に移った日だ。「核抜き本土並み」の約束は反故にされ、県民は基地撤去の実現にむけ「平和行進」を続けている。

 76年前(48年)の同じ日、パレスチナの人びとは英国の統治からイスラエルの軍事占領下に置かれた。70万人とも80万人とも言われる人びとが、自宅の「鍵」を手に難民となった。パレスチナ人は「ナクバ(大災厄)」と呼び、帰還を求め闘いを続けている。

 今イスラエルはそんな難民が身を寄せたガザ地区を爆撃している。「テロ組織ハマスの攻撃に対する反撃」を掲げ、国境≠越えて攻め入っている。ハマスの司令部・基地を破壊するためだという。イスラエルの「自衛権行使」という言い分を日本も含めた欧米主要国は認めている。

 沖縄に配備されるミサイルや日本列島の基地増強は「敵基地攻撃」を前提にしている。「自衛権行使」が招く惨状を「ガザ」と同じように「敵国」にもたらそうということだ。「自国」の被害は眼中にない。

 国際的な平和を求める闘いとの連帯が必要だ。世界をつなぐ平和を求める運動は、被害者にも加害者にもならない闘いなのである。
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