2024年05月31日 1823号

【地方自治の侵害「国の指示権」創設に反対 反対署名4108筆を提出し 総務省を追及】

 国と自治体の対等・協力の関係を変容させる地方自治法「改正」案の廃案を求めて5月16日、総務省に要請行動を行った。中川哲也大津市議、吉高ゆかこ京田辺市議、井ア敦子京都市議、有賀精一日野市議、土屋のりこ足立区議ら地方議員8人と市民が、議員70人・市民40人が賛同した意見書と反対署名4108筆(第1次分)を提出。その後記者会見を開いた。

 今国会で審議中の改定案は、大規模災害、感染症まん延など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」への対応として、国から自治体への「補充的な指示」の必要性を説く。新たに創設される「国の指示権」は災害、感染症対策に限らず、基地建設、原発再稼働などにまで拡大する懸念がある。

 すでに、災害対策基本法や感染症法などの個別法で国の指示は規定されており、疑念は尽きない。

 総務省担当者は「個別法で対応できない事態を想定」と「改正の趣旨」を述べるが、例えば過去にそういうケースはあったのか。将来起こりうるどのような事態を想定しているのか。担当者は過去も将来の事態も、具体的には示せない。

 中川市議は「想定された対処法、政策がないのなら、国と地方が様々な法律を駆使して対処し、ないものは協議して実施する。これで十分可能ではないか。なぜ『指示権』まで飛躍するのか」と疑義を呈した。

 曖昧な「国の指示権」は、殺傷武器の輸出解禁などのように、国会審議を経ないで閣議決定で発動される。参加した市民は「何を対象にどこまで拡大できるのか。その制約が明確に示されていない」と危険性を指摘したが、担当者はまともに答えなかった。

 別の問題点も指摘。改定案の前段、第33次地方制度調査会の答申には、行政と住民の接点のオンライン化を掲げる。デジタル化に対応できない市民は置き去りにされ、職員削減を進めることになるのでは。

 担当者は否定したが、「『職員削減を意図したものではない』と通知を出すべきだ」と自治体の不安を払拭(ふっしょく)するよう訴えた。

 改定案の「指定地域共同活動団体」には、公共サービスの民間企業への委託を進める狙いがうかがえる。担当者は「共助によって地域課題の解決を行うものであって、営利企業は該当しない」と回答するが、今後も注意を要する問題だ。

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