2024年06月07日 1824号

【1824号主張 戦争推進へ自治体に介入/地方自治法改悪は許さない】

5月中の衆院通過狙う

 地方自治法改悪案の衆院審議が大詰めを迎えている。法案は、法律に規定がなくても政府が閣議決定だけで自治体を指揮下におき対応を指示できるとする「指示権」を創設する。憲法の定める地方自治を壊すものだ。

 法案の指示権発動要件は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の発生の恐れ」「地域の状況その他」などその範囲もきわめてあいまいだ。しかも、現行法に明記された「緊急性」の要件まで外す。国が自治体に対して平時でもフリーハンドで指示権を行使することが可能だ。立法府である国会は関与すらできない。

 政府は、個別法で対処できない事態について「念頭においていない」(5/23松本総務相)と立法事実を示すことができない。自公維新は、指示権行使後の国会報告というまやかしの修正案で衆院総務委員会採決を強行。5月中の衆院通過を狙う。

指示権で下請け機関化

 指示権は、国の関与を制限した地方分権の流れに逆行し、自治体を国の下請け機関化するものだ。災害や感染症に限らず、軍事基地建設や原発再稼働、「有事」の際の動員など戦争国家と大企業の利益のために乱用することは容易に想定できる。すでに岸田政権は、沖縄辺野古新基地建設で県の権限を奪い強権的に従わせる史上初の代執行を昨年末に強行した。指示権創設はこの例を全国に広げる。

 政府は、集団的自衛権の発動要件である存立危機事態を定めた事態対処法で対応できない場合の指示権発動も「除外されない」(5/23衆院総務委員会)と答弁している。戦争の兆候がある≠ニ言えない段階でも、国の自治体に対する統制を一気に強化し、自衛隊の作戦への協力のために道路・港湾・空港使用など戦争体制へ自治体を丸ごと動員することすら可能というのだ。

 これは、まさに自民党の緊急事態条項改憲案に盛り込まれた、国会の関与なしにできる自治体への指示権の先取りである。自治権を踏みにじり、戦争とくらしの破壊を推進する指示権は断じて認められない。

地域から改悪阻止へ

 指示権に反対する声は広がっている。5月16日、関西を中心にした全国の自治体議員は、反対署名4108筆とともに110人の賛同を得た意見書を提出し、総務省に要請し追及した。

 東京都世田谷区長や杉並区長らは2度にわたり院内集会を開催し、反対行動を強めている。杉並区長が幹事を務める自治体スクラム支援会議(9自治体)は安易に行使しないよう求める声明を発し、総務省に要請した。自治体が望むのは権限であり指示ではない。

 戦争国家づくりを推進する地方自治法改悪案は、廃案しかない。自治体議会への意見書・請願提出など地域から改悪阻止の運動を強めよう。

   (5月28日)
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