2024年06月07日 1824号

【ミリタリー/またか 海上自衛隊ヘリ墜落事故/大軍拡進む限り事故も続く】

 4月20日の夜、海上自衛隊の哨戒ヘリコプターSH60K2機が墜落し、搭乗していた計8人のうち1人が死亡、残る7人は行方不明のままである。墜落現場は伊豆諸島・鳥島から東に約270キロの海域で、2機は夜間訓練中に空中で衝突し、水深約5500メートルの海中に沈んだ可能性が高いと発表された。

 海自によれば、潜水艦を探知する夜間訓練中の事故であり、訓練にはヘリ6機と潜水艦1隻、水上艦8隻が参加、墜落した2機は別々の護衛艦から発艦したという。訓練はヘリからつり下げた探知機(ソナー)を水中に投入し、敵国の潜水艦を探査、追跡、攻撃するという想定のもと、実戦さながらの大掛かりな訓練であったことが推察される。

 2023年4月にも、沖縄県宮古島沖に陸上自衛隊ヘリが墜落し、10名の隊員が死亡する事故が起きるなど、16年からの8年間で自衛隊の航空機事故は計10件も起きており、行方不明者を含め40名もの隊員の命が奪われている。

 近年、頻発する自衛隊の重大事故の背景を見よう。

 その一つは、政府の大軍拡政策に基づいて、自衛隊に急速な「戦闘能力の向上」が求められていることがある。防衛省は、近年の事故について機体そのものの不備ではなく(真偽のほどは不明)、ほとんどは人為ミスが原因であるとする。だが、この間の事故で犠牲になった隊員(航空機の操縦者)はほとんどが熟練の隊員である。こうした熟練者ですらミスを犯しかねない過酷で危険な訓練が繰り返されているのではないかと思える。

 実際、米国・韓国など他国軍との共同訓練を含め、自衛隊の訓練は激増している。22年度に自衛隊が参加した多国間共同訓練は46回あり、18年度の22回と比べてほぼ倍増している。

軍縮こそ命を守る道

 さらに、慢性的な人員不足≠熕[刻で、現場では大きな負荷が蓄積されていく一方だ―との声も多い。直近10年ほどは、定数とされる24・7万人から常に1万〜2万人ほど不足。例えば、任期制自衛官(18才〜32歳を対象に任期2〜3年で募集)の22年度では採用予定者数(9245人)の半分以下の採用だ。もちろん憲法で禁止された戦力そのものである自衛隊は憲法違反で縮小・解体していくべきだが、実態は部隊の実働現場を担う「士」(兵士)の充足率が75%にまで落ち込んでいるという。

 軍事緊張を高める大規模演習をはじめ「戦闘能力の向上」を無理やり求める政府の大軍拡政策が続く限り、悲惨な事故は繰り返される。

 今すぐ軍縮に舵を切ること。これこそが、自衛隊員を含めすべての住民の命を守る唯一の道である。

 豆多 敏紀
 平和と生活をむすぶ会

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