2024年06月07日 1824号

【みるよむ(698)/2024年5月18日配信/増加する若者の自殺 失業・貧困と心理的抑圧】

 イラクでは、若者の自殺が増加している。その原因はどこにあり、どうすればいいのか。2024年3月、サナテレビはこの深刻な問題に焦点を当てた。

 毎年の世界の自殺者は約100万人といわれる。イラクでは2023年、保健省に登録された数字だけで1073人が自殺とされる。この「自殺」者数には、実際は家族から命を奪われた女性たちもいる。

 イラク女性の自殺率は高い。農村部などでは外出さえ自由でない、女性の意思による離婚や別居も妨害される、などの抑圧が自殺の原因ともなっている。

 映像では、自殺しようと川に飛び込もうとする、高所に登りかろうじて周辺の人たちに押しとどめられる姿などが出てくる。そのほとんどは若者だ。

 サナテレビは、若者の自殺の原因を「失業、貧困や経済状況全般、薬物中毒、軍隊内での兵士に対する虐待や心理的圧力などだ」と指摘する。原因の36%は心理的ストレスだという。

精神衛生予算の貧困

 イラク政府は「自殺の原因に対し真剣な対策を取らず、自殺を減らす努力をしてこなかった」。WHO(世界保健機関)によれば、イラクでは4人に1人が精神的苦痛に苦しんでいるが、医師の数は極端に少ない。また、精神衛生関連の予算は医療関係全体の2%以下である。さらに、私立の診療所は営利主義であり、大量の薬を売りつけ、医師にかかるだけでも多額の費用が必要だ。患者は自分の問題を詳しく聞いてもらうこともできない。

 こうした状況は、日本とも共通する。女性や若者に対する抑圧、心理的圧力が強い社会で自殺者が増えているにもかかわらず、政府はまともな対策を取らず、公的医療も貧困なのだ。

 サナテレビは、そのような社会を変革する闘いを広げ、自殺という悲劇をなくしていこうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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