2024年06月14日 1825号

【出入国管理法 技能実習法の改悪許すな/奴隷制維持する育成就労制度/永住権剥奪のハードル下げる】

 現在、国会で審議中の「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」。「技能実習制度」を「育成就労制度」に改編するとともに、「永住資格はく奪」のハードルを下げることを狙っている。

   * * *

 政府が「移民政策ではない」と強弁してきた「技能実習制度」。「技能等の移転を通じた国際貢献」という建前で偽装し、労働者としての権利とともに生活者としての権利を侵害し続けてきた。技能実習制度廃止は30年以上続いた人種差別や人権侵害を止める契機となるはずであった。

 しかし、育成就労制度への改編を機に、「永住に繋がる外国人の受け入れ数が増加する」との想定から、在留資格取消の事由を新たに付け加え、厳罰化しようとしている。その事由は「入管法上の義務を履行しない場合」や「故意に公租公課の支払をしない場合」、「一定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられた場合」だ。税の滞納で国外追放の事態も想定される。

 取消事由の拡大は、現に日本で生活する約88万人の永住者及び今後永住許可を得ようとしているすべての外国籍住民の立場を不安定にする。政府は、有識者会議で議論もされていないのに、育成就労制度と抱き合わせで永住権はく奪制度を盛り込んだのだ。

 これは外国人に対する差別と偏見を助長する。導入される育成就労制度も、継続する特定技能制度も、労働者としての尊厳や差別の禁止など国際人権基準にもとづく受け入れ制度とはほど遠い「現代版奴隷制」だ。

 育成就労制度では本人の意向による転籍(会社を替わること)を容認すると言うが、様々な要件を付けて、来日する労働者の権利を制約し、特定の受け入れ機関に縛り付けようとする構造は、廃止する技能実習制度と何ら変わらない。

 労働者の賃金を低く抑え、転籍を困難にすれば、受け入れ機関は安価な「労働力」を安定的に確保することができる。ここにこそ奴隷構造の本質がある。

 また、育成就労制度も技能実習制度の時と同じく家族帯同を認めていない。労働者の生活の安定が図られず、家族の結合権を保障する国際人権基準も守られない制度は絶対に許されない。来日する労働者は「労働力」というモノではない。生活者であり人間である。

   * * *

 外国人労働者を受け入れる育成就労制度及び特定技能制度は、債務返済のための奴隷労働を無くし、転職の自由など労働者の基本的権利と人権保障にかなうものに根本的に転換させなければならない。人間を人間として受け入れ、尊厳と権利を尊重し、安心して安定的に暮らすことができる社会を創り出すためにも、この法案を廃案にしよう。
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS