2024年06月14日 1825号
【ニデックビル建設地に「農地」課税は違法 住民訴訟で全面勝訴 京都府向日市議・杉谷伸夫】
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5月16日、京都地方裁判所は私を含む向日(むこう)市民2名が行っていた住民訴訟で、住民側全面勝利の判決を言い渡しました。
訴訟は、JR向日町駅東側にニデック社(旧日本電産)が取得した土地のうち、使用収益を開始した広大な土地について農地として格安課税を行うのは違法であることの確認を求めたもので、判決は市の課税は違法であると明言しました(市は控訴)。
"守秘義務"で隠した市
京都駅から大阪にむかってJRで3駅8分にある「向日町」駅の東側には、貴重な田園風景が広がっていますが、現在ここにニデック社の第二本社ビル群の建設が進められています。2年前に1棟が竣工し、数年以内にあと3つのビルが建設される予定です。
この地域は、市街化調整区域(市街化を抑制するため、一部の例外を除いて建物の建築が禁止される地域)で、向日市の都市計画では「緑地保全地区」でした。9年前に現在の市長に代わって、この地域の土地を産業などのために有効利用しようという動きが表面化し、その後約12ヘクタールの土地区画整理事業が進められ、その半分以上をニデック社が取得し開発を始めました。2022年7月には1棟が竣工し、すでに稼働しています。
ビル建設が進みつつある3年前、「日本電産が開発中で建設が始まっている広大な土地が、未だに農地課税のままだ。向日市に事実関係を質して、是正を求めてほしい」との告発が、市民から入りました。私は議会の内外で、市に事実関係を質しました。しかし返ってくる答えは「個別の課税情報については守秘義務があるので、答えられない」というものです。らちがあきません。
その過程で、間違いなく向日市が農地課税を行っていることの確信を得ました。数千万円の不適正な課税の疑いが強いのに、放置はできません。そこで真実を明らかにし、本来は向日市の歳入となるべき多額の税収を取り戻すため、22年9月に住民訴訟を起こしました。市民からは多くの問い合せをいただきました。このビルが建設されつつあるこの土地が、まさか農地として課税されているなど誰も思っていなかったのです。
判決は全国にも影響
特定の企業や個人に対する税の違法・不当な優遇が、その他の自治体でも行われているのではないでしょうか。しかし「個別の課税情報の守秘義務」が壁となって、市民が明らかにすることは極めて困難です。今回、この違法な課税を突き止めることができたのは、向日市という小さな自治体に、特定の法人一社が巨大開発を行ったという特別な条件があったからです。ですから、今回発見できた違法な課税行為に対して、司法が「行政の裁量」を広く認めず厳正な判断を下したことは、全国的に影響する大きな意義があると考えます。
判決の要旨解説
(1)宅地等として課税できる
向日市は、道路や上下水道などのインフラがまだ未整備なので宅地課税はできないと主張するが、使用収益開始通知がなされ、使用または収益を開始することができることになれば宅地課税できるのであり、市が主張するその他の条件は関係ない。
(2)農地でなく社屋用地として評価するのが相当
その上で宅地課税するかどうかは行政の判断である。この土地は建築確認を受け、起工式が行われ、固定資産課税の基準日には、社屋の建設工事が始まっていた。こうしたことから、この土地は社屋用地として使用されていると評価するのが相当である。宅地等として課税すれば課税額が増加することは明らかであり、農地として課税すればその増加分について課税を免れていることになる。
◇結論「令和3、4年度(2021、2022年度)の固定資産税につきみなす課税による再賦課決定を行わないこと(=農地課税を続けること)は、被告の裁量権の範囲を逸脱するものとして違法である」
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