2024年06月21日 1826号
【原発事故汚染水海洋放出差止訴訟/第2回口頭弁論から/6・17最高裁行動へ】
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2023年8月から始まった汚染水海洋放出は今も断続的に続いている。放出は現在までに6回にわたって行われた。福島県民・漁業者をはじめ市民の反対の声が上がるが、汚染水批判を中国に対する排外主義にすり替える政府の宣伝も相変わらず続く。放出を止めるためには、反原発の闘いはもちろん、差別排外主義反対の闘いとも連帯することが必要だ。
国際世論も約束も無視
汚染水を海洋放出すべきとの意見は、原発推進勢力の間には福島事故後の早い段階からあった。本格化したのは2020年1月、経産省のALPS(多核種除去設備)小委員会が「海洋放出を適当」とする報告書提出からだ。21年4月、菅政権が海洋放出を決定した。
昨年4月、G7(主要7か国)環境大臣会合で、日本政府は海洋放出への同意の取り付けを狙った。しかし、ドイツ環境相は同意せず、共同声明でもIAEA(国際原子力機関)による「処理水の安全検証プロセス」を支持したものの、放出そのものに対する同意は表明していない。
一方、福島県民・漁業者ら363人が国・東京電力を相手取り、汚染水の放出差し止めを求め提訴。今年3月、福島地裁で行われた第1回期日では漁業者・市民が放出に加え、漁業者の理解なしに放出は行わないとする約束を破った国・東電への怒りを表明した。
議会でトンデモ意見書
神奈川県内の中学校教員が「地元との同意がない限り、汚染水を放出しないとの約束を反故(ほご)にして、国・東京電力が放出を強行した」という正しい内容を教えたことに対し、「学校教育の現場で汚染水の用語を使うな」という意見書が2月28日、福島県議会に提出され、県議会自民党などは3月19日に可決、採択した。
自民党による「教育現場におけるALPS処理水の理解醸成に向けた取組の更なる強化を求める意見書」は、放射性物質の含まれた水で海を汚してほしくないという正当な思いから海洋放出に反対している市民に対し「科学的根拠もないまま、処理水を『核汚染水』と称して虚偽の情報を世界中へ発信している中国と同様」だと決めつける。その上で、福島県内にとどまらず、全国の教育委員会に対し「科学的な根拠に基づいた正確な情報による適切な教育」のため「適切な資料等の活用」による教育を行うよう求めている。
ALPS処理水には、トリチウム以外にも完全除去できないまま放射性物質が残っている。そうした実態を無視し、安全な「処理水」だとする政府見解だけを唯一絶対の「正解」とし、これ以外の異論を排除するよう公然と求めたことに問題がある。中国共産党の見解だけが唯一絶対の正解とされ、異論を唱えれば弾圧される中国と同様≠フことをしているのは、県議会自民党自身に他ならない。
決議案の提出者は鈴木智福島県議で、受け取ったのは西山尚利県議会議長だ。鈴木県議は県議選の直前や期間中に統一教会信者の前であいさつ。西山議長に至っては、統一教会の集会などに出席し、関連団体から「平和大使」に任命されていたことまで判明している。トンデモ意見書の採択を主導したのは、こうしたトンデモ県議たちだ。
政府忖度の司法にノー
ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)北海道メンバーは裁判初弁論期日の3月4日朝、自民党福島県連に意見書取り下げを求める要請を行った。
「国に責任なし」の最高裁不当判決(22年6月)以降、原発事故をめぐる裁判は賠償、差し止めとも原告側が全敗。50年間で原告が2勝しかできなかった3・11前の「暗黒時代」が再来している。この暗黒時代を終わらせようと、判決から2年となる6月17日に最高裁包囲行動が行われる。最高裁を市民の声に従わせるため、多数の結集が必要だ。
汚染水差止訴訟は6月13日、福島地裁で第2回口頭弁論期日が開かれる。訴訟費用を捻出するためのクラウドファンディングも行われている。7月18日まで。
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