2024年06月21日 1826号
【「月桃の花」歌舞団が新作公演/私はここだ!Hope is in ourselves/生きづらさを見つめ 人とのつながりを実感】
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5月18日、大阪市で「月桃の花」歌舞団の新作ミュージカル『私はここだ!Hope is in ourselves』《*》が初演。200人以上の観客の好評を得て大きく成功した。主役の一人、看護師ゆりを演じた若手メンバーに、準備から宣伝、本番を担った思いを寄せてもらった。
《*あらすじ》
保育士をめざしアルバイトで学費・生活費を稼ぐ専門学校生さくらと、人格無視の奴隷労働を強いられている兄、駿。自ら望む医療とかけ離れた日々の訪問看護師ゆり。それぞれに生きづらさを抱えた若者たちが沖縄戦ただ中のガマ(自然壕)にタイムスリップし、戦場での死を目前に「生きる大切さ」を見つけ、希望を手にする。
私はこのミュージカルを、一人でも多くの人に伝え、観てもらいたいと宣伝活動に取り組み、様々な施設・お店まわりをしました。出会う人たちの声を聞くと、形は違っても、様々な生きづらさを抱えていました。
私たちの活動について親身に話を聞いてくださった中には、母子生活支援施設の方もいました。主に母子家庭で生活に困難を抱えている方が入所し生活している施設で、母親・子どもとも様々な困難を抱えており、経済的な面だけでなく、人間関係や生活など目には見えない所で問題を抱えていること、そして、今も声に出せず、抱え込んでいる人がいることを知りました。
そんな中で、今回のミュージカルが生きていて辛いと感じ、生きていること、生きることに希望を持てない人たちが希望を持つ第一歩になれば―そう思う気持ちを自身の経験も含め伝えると、親近感を感じたり、共感し、前向きに検討してくれる方も多くいました。
新キャストと一緒に成長
自身の役作り以外に、初めての経験となったのが、新しいキャストメンバーの育成・サポートです。
3月のエイサーまつりのイベントで中学生の女の子に出会いました。ミュージカルにも興味を持ち、沖縄の看護学生ウシ役をやってくれると言うので、1か月ちょっとの短い期間で本番を迎えるというプレッシャーの中で練習してきました。
練習の中で、たくさん悩み、不安もありました。でも、新しいメンバーの持つ能力や可能性を信じて、伸ばせるところはとことん伸ばす。できない、できていない部分には、寄り添い、一緒に練習して、少しずつできるようにしてきました。
このミュージカルを一緒に作っていく、練習を共にするにあたって、様々な会話をしました。その中で、自身の辛かったいじめの経験を話してくれた時には、辛かった経験を人に話せる強さ・勇気に、私のほうが励まされることも。練習を共にすることで生まれていく関係の中で、練習するたびに成長が見え、サポートする私も一緒に成長させてもらったと思えるほど、良い経験になりました。
「出れるかな」を越えて
私自身、精神疾患を抱え、心身共に不安定で「本番、出れるかな」と思うくらい症状がひどく練習がまともにできない時もあり、不安・ストレスなどを抱え込んでしまうこともありました。
ですが、ミュージカルを一緒に作る仲間の力・協力もあって、本番当日は最初から最後まで舞台に立つことができて良かったです。あらためて、このミュージカルを通して、人との出会い、つながりの大切さを実感しました。
次の公演に向けて、見てくださる方々に、見に来て良かったと思えるステージ作り、役作りなど、頑張りたいと思います。
(大阪・「月桃の花」歌舞団 松井穂香)
◆次回プレミアム公演は7月7日(日)14時開演 川崎市・中原平和館交流広場
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