2024年06月28日 1827号
【イスラエル無差別爆撃で「人質救出」/米「停戦」提案の裏で戦闘支援か】
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米政府は、国連安全保障理事会(6/1)に続き、主要7か国首脳会議(6/13、14)でも、パレスチナでの「停戦役」を演じたが、それを信じる者はいない。とは言え、たとえポーズにしても「停戦案」を提示せざるを得ない状況に追い込まれているのは事実だ。イスラエル支援に対する米国内外の批判は高まっている。即時停戦へ、情勢は大きく変わりつつある。
孤立ごまかす「停戦案」
米政府は、バイデン大統領が公表した「停戦案」への支持を国連安保理に求めた(6/10)。これまで、何度となく拒否権を行使し、停戦案をつぶしてきた米国が、今回は提案国になった。その内容は5月にハマスが示したものと大差がないと言われている。なぜ、180度態度を変えたのか。
5月末に相次いだ国際刑事裁判所検察官の逮捕状請求、国際司法裁判所のラファ攻撃停止措置命令をバイデンは「恥知らず」などと貶(おとし)めた。これによりイスラエルだけでなく米政府に対する非難の声が一層高まったからだ。
「ラファ攻撃が行われれば支援を止める」とのバイデンの「脅し」もネタニヤフ首相には効かなかった。イスラエルはラファ攻撃をやめない。米政府は「停戦役」に転じ、自らの「努力」を示そうとした。バイデンは5月31日、停戦案を発表する際に「イスラエル政府の堤案」とすれば、ハマスが拒否するだろうと読んでいたに違いない。だが、イスラエルの方が先に否定した。
続く安保理でも失態を重ねた。米国代表が「イスラエルは停戦案を受け入れている」と語ったそのわずか数分後、イスラエル代表は「停戦交渉に興味はない。戦争を続ける」と述べた。
米政府は停戦交渉の行き詰まりの原因はハマスだと自らの口で言うしかなった。ブリンケン国務長官は「停戦合意の障害はハマス。ハマスがいくつか修正を求めた。そのまま受け入れていれば12日にも合意に達していた」と非難した(6/11)。
一方のハマスは、停戦協定の保証人に米国の他、中国、ロシア、トルコを加えるよう求め、「イスラエル政府は誰もこの停戦合意受け入れを公に表明したことはない」とその危うさを指摘した(6/13Mondoweiss)。
バイデンはG7の場でも「障害はハマス」と繰り返すことしかしなかった。
米軍関与の疑い
イスラエルを擁護し人命を顧みない米国政府の姿勢は変わらない。イスラエル軍が6月8日、ガザ地区中部のヌセイラット難民キャンプを爆撃し、「人質4人を救出した」とする作戦に米軍が関与していたのではないかと疑われている。
米国のパレスチナ政策について情報を発信しているウェブニュースMondoweissの報道によればこうだ。
イスラエル軍は午前11時、人びとが街を行きかう時間帯に陸、空、海から1時間にわたり攻撃をしかけ、市民274人(うち160人が女性と子ども)を殺害した。結果として4人の人質が解放されたが、救出された女性は「一緒に拘束されていた2人はイスラエル軍の爆撃で死んだ」と証言。ハマスは3人の人質がイスラエルの攻撃で死亡したと発表している。「人質救出」を名目にした無差別攻撃だ。
米軍の関与が疑われているのは、ヌセイラットの沖に設置された浮き桟橋を使ってイスラエル軍が街を急襲したからだ。桟橋は「ガザに人道支援物資を搬入するため」として米軍が設置したもので、8日の作戦ではこの桟橋から陸揚げした人道物資運搬トラックにイスラエル兵が潜んでいた。
米中央軍は関与を否定しているが、桟橋が軍事目的に使用される可能性は否定できない。さらに、ガザの市民をキプロスやレバノンに強制移住させるための準備ではないかとさえ、疑われているのである。
突出する軍事支援
米国にとってイスラエルとの関係はどれほど重要か。1946年から今日までの累積援助額を他国と比較して見るとよく分かる。米国のイスラエル援助は、70年代以降の50年あまりだが、経済・軍事援助あわせ累計約3100億ドル。2位エジプトの倍近い額になっている。
軍事援助が突出したのは、第4次中東戦争(73年)に伴うオイルショックへの対応に迫られてからだ。アラブ産油国のけん制のため、イスラエル支援が必要となった。その後、オバマ政権は2018年、10年間で380億ドルの軍事支援に関する覚書に調印している。24年は覚書の年間38億ドルに加え、新たに87億ドルが追加され125億ドルが援助される。
この援助額の大半(年間38億ドルのうち約33億ドル)は対外軍事融資(FMF)。米国製兵器を購入するための補助金として提供される(5/31米国シンクタンク外交問題評議会)。つまり、米軍需産業へ還流する資金なのだ。
ただ、イスラエルは特例として、自国製の兵器購入も許されている。米軍需産業とイスラエル軍需産業の緊密さを表しているともいえる。たとえばイスラエルが開発した「アイアン・ドーム」の生産パートナーとして、米軍需産業レイセオンがアイアン・ドーム用の迎撃ミサイルを製造しているのだ。
足元からの批判
米国内では、このようなイスラエル支援に対する批判が高まっている。3月の世論調査(ピュ-ー・リサーチセンター)によれば、イスラエルへの軍事支援について、10代、20代では賛成16%に対し反対45%で、30代、40代でも賛成26%、反対40%。大統領選を前に、バイデンが「調停役」を演じざるをえない背景の一端を示している。
イスラエルの国内でも、ネタニヤフの戦争継続路線に対する批判は高まっている。イスラエルメディアの世論調査(5/1)では「人質交換と停戦」を支持する人は54%になった。ネタニヤフ首相の「勝利まであと一歩」との主張を65%が信じないと回答している。こうした世論の変化を背景に戦時内閣から野党が離脱(6/9)。ネタニヤフの戦争継続を批判し、早期の総選挙を求めている。
「ハマス殲滅(せんめつ)」を掲げ、実際はすべてのパレスチナ人を追放する狙いは、シオニストたちの思い通りには実現しない。それどころか、一層孤立を深めるだろう。
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こんな中、米連邦議会はネタニヤフを招き、7月24日上下両院合同会議で演説の機会を作る。だが、ネタニヤフが「正当性」を語れば語るほど、世界からの批判は高まり、米議会の非常識が際立つに違いない。大統領選と同時に行われる上下両院議員選挙で、パレスチナを支持する候補の躍進が必要だ。米国、イスラエルをはじめ即時停戦、占領終結を求める世界の市民の一層の運動こそ緊急に問われている。
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