2024年07月12日 1829号
【ただちに全国一律で最低賃金1500円実現を/国際水準からかけ離れた日本】
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厚生労働省の中央最低賃金審議会は6月25日、2024年度の最低賃金引き上げに向けた議論を始めた。
経団連は、大手企業の賃上げ率を5・58%と発表したが、城南信用金庫と東京新聞の共同調査では、首都圏の中小零細企業の約3割が「賃上げの予定なし」と答えた。「非正規春闘実行委員会」は、賃上げ要求をした107社のうち48社が賃上げに応じない「ゼロ回答」だったと発表している。
外食産業など時間給がほぼ地域最低賃金に張り付いているところでは、10月の改定最低賃金発効に対応するために春闘では「ゼロ回答」をする場合が多い。
また、最低賃金を上げた際、その水準を下回っていた労働者の割合は22年度に19・2%と、10年前に比べ10ポイント以上高まった(3/19日経)。最低賃金すれすれで働かされている非正規労働者や、パート労働者が増加し膨大になっていることを物語る。いよいよ最低賃金の大幅上昇を実現しなければならない。
異常に低い最低賃金
内閣府の23年末発表によると、一般労働者の賃金中央値(数値順に並べ真ん中にあたる額)に対する22年の最低賃金の比率は、フランスと韓国が60・9%、英国は58%、ドイツは52・6%だった。日本は45・8%と各国を大きく下回る。
EUは22年10月、「最低賃金指令」を採択し、加盟国の最低賃金引き上げの目安として賃金中央値の60%を目指すとした。英国も24年までに3分の2に引き上げる方針を掲げた。
日本の最低賃金は、実額でも低さが国際的に際立っている。OECD(経済協力機構)によると22年の1時間当たりの最低賃金はフランスが10・85ユーロ、ドイツが10・52ユーロ、英国が9・35ポンドで、当時のレートでも1500円前後。24年現在では、円安と相まってフランス・ドイツで約2000円、オーストラリアでは7月に2500円に達する。これらと比較すると、日本は3〜5割以上低い水準なのだ。岸田政権は「30年台半ばに全国加重平均で1500円を実現することを目指す」と言うが、冗談ではない。即刻1500円への引き上げが必要だ。
根拠のない地域別決定
昨年の引き上げで、全国加重平均は1004円となったが、東京都が1113円に対し、一番低い岩手県は893円と220円もの格差が生じている。06年時の格差は109円であり、その後拡大し続けている。急激な人口減少や県外への人口流出によって地方での求職者が大きく減少している。その活性化のためにも、地方の最低賃金を大幅に引き上げ、地域間格差を縮小させなければならない。
地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の最低生計費について、研究者らによる16年の調査ですら、その金額は単身の若者において月額22万〜24万円(税・社会保険料等含む、静岡県立大短大部・中澤秀一准教授)となり、都市部か地方かによってほとんど差がなかった。これまで「大都市は物価が高いので生活費が高いけれども、地方はそうでもない」と言われてきた。しかし、実際には商品価格に地域差はなく、地方では仕事に就くことをはじめ日常生活を送る上で自動車保有が不可欠であり、都市部の一部物価や家賃の高さと相殺(そうさい)している。
また、最低生計費月額22〜24万円とは、月平均とされる173・8時間働くと仮定した場合、時間給に換算すると1300〜1400円に相当。現行最低賃金と大きな隔たりがある。現実には、ダブルワークなどの長時間労働で、多くの最低賃金レベルの労働者はようやくぎりぎりの生活を維持しているといえる。長時間労働を解消するためにも最低賃金の大幅引き上げが不可欠である。
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政府サイドの労働政策研究・研修機構の調査でも、08年以降の最低賃金の引き上げが与えた影響について、相対的に低賃金となっている労働者の賃金を底上げし、日本全体の賃金格差を縮小する効果を持つことを記している。
深刻化する貧困をなくし長時間労働を解消するために、ただちに全国一律最低賃金1500円への引き上げを実現しよう。
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