2024年07月12日 1829号
【原発のない地球へ/いま時代を変える(1)/原発依存政策の根本的転換へ ―新シリーズのスタートに】
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福島第一原発事故から13年が過ぎた。現場では毎日4000人が働いていながらデブリ(核燃料)の取り出しも行われず、廃炉のメドは立っていない。山林の除染はなされないまま、土壌汚染は計測すらされず、原発建屋からの汚染水は毎日発生している。再稼働によって使用済み核燃料が溜まり続ける一方で、最終処分場設置のメドも立っていない。原発とは、健康被害を生み、生業(なりわい)を困難にさせ、取り返しのつかない環境破壊をもたらす、大変な迷惑施設である。
にもかかわらず、政府は再稼働へ舵を切った。“原発事故の国に責任なし”の一昨年6月17日の最高裁判決をお墨付き≠ノし、規制基準の強化をはからず、避難計画もないがしろにしたまま、老朽原発の延長まで決めてしまった。これでは再び原発過酷事故が起きてしまう。起きても国は責任をとらず、地域は破壊され、被災者・避難者の生活が奪われてしまう。
原発事故は、一企業の公害問題とは異なり、地球全体に関わる最大の環境破壊となる。原発のない地球―未来を築いていく責任が今を生きる世代に求められているのではないだろうか。
今号からコラム『原発のない地球へ』をスタートする。原発に関連した情勢、運動、情報などあらゆる課題を取り上げ、原発のない地球へと時代を変えていく一助としたい。反原発・反公害・人権に取り組む様々な運動体の関心事を取り上げたい。
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ドイツは脱原発に舵を切り、2023年4月15日、1961年の初送電開始以来のすべての原発を停止させた。2030年には全電源に占める再生可能エネルギーの割合8割、2035年には100%をめざす。
現存する原子炉の廃炉については、政府100%出資の廃炉会社が瓦礫(がれき)の解体、除染作業にあたるが、核のゴミの持って行き場に苦戦している。国内に中間貯蔵施設は16か所あるものの、最終処分場は反対運動もあって未定。地下の探査ははるかに先の話だ。
一方で、電力は再生可能エネルギーに次々と移行している。ドイツは原子力法で原発による電力生産は認められていない。大手電力会社RWEは、再エネや蓄電、水素の分野に2030年までに550億ユーロ(約9兆円)を投資する。蓄電池も発達し、太陽光など気候に左右されない安定した電力供給が可能になっている。また、電力生産と消費を結ぶ送電線も日本とは異なり融通性を持って効率的に利用されている。
日本でも福島原発事故後の2013年9月〜2015年8月の2年間、すべての原発が止まったが、電気は足りていた。政府はその間火力発電に頼り、再エネへの抜本的転換を打ち出さないまま「火力によるCO2を排出させないため原発を活用するしかない」との論理にすり替えていった。
ドイツでは今、原発の利用に関する議論は決着済みだ。利益最優先の場当たり的日本のエネルギー政策とは全く違う。 (Y)
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