2024年07月19日 1830号
【パレスチナを選挙争点にした連帯運動/戦争継続を許さない力を】
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欧州議会選挙に続いて英仏で国政選挙が行われた。いずれも政権与党勢力は劣勢だった。移民政策などで「右翼の伸長」とことさら強調されているが、ウクライナ、パレスチナで続く戦争を後押しする現政権に対する批判が高まっているのも確かだ。和平交渉を進めるためにも、戦争反対を政策の中心に掲げて闘う政治勢力の拡大が求められている。
和平交渉―時間稼ぎさせるな
パレスチナの和平交渉はどうなっているのか。イスラエルが交渉団を送ると報道された(7/4)。実質的に外交を取り仕切る諜報機関モサドの長官らが仲介国カタールに出向く。
停戦案は5月末、米国バイデン大統領が公表し、国連安保理も支持の決議をあげたものだ。ネタニヤフ首相は停戦に応じる素振りさえ示さなかったが、イスラエル国内からの批判や閣僚辞任による戦時内閣の解消などにより、テーブルには着くことにした。
停戦案は3段階。第1段は、一時休戦によりハマスが拘束する人質・捕虜とイスラエルが収監するパレスチナ人を段階的に解放する。第2段は恒久和平、第3段はガザの統治、復興計画と続く。
これまで何度も停戦交渉が行われながら実現には至らなかった。これ以上イスラエル側の時間稼ぎを許せば、さらに犠牲者が増える。爆撃による殺傷だけでなく、大量の餓死が発生しかねない危機的状況になっている。今度こそ即時停戦を実現し、水、食糧、医薬品などの搬入を保証させなくてはならない。
停戦合意へ圧力を強める時だが、主要国の政治リーダーは相変わらず自己保身のために、スポンサーとなるユダヤ資本の顔色をうかがっている。
米大統領選―イスラエルロビーの暗躍
米国では再選をめざすバイデン大統領が民主党内から「辞退」を迫られている。トランプ前大統領とのテレビ討論会(6/28)で完敗し、「バイデンでは勝てない」感が一気に強まった。
いずれの候補者もパレスチナ和平にとっては障害物であることに違いはない。トランプは大統領の時、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館をテルアビブから移した。エルサレムはパレスチナも首都としており、対立をあおった。トランプに和平を進める気がないのは明らかだ。
バイデンにしても停戦案の受け入れを強く迫る気はない。イスラエルのガザ攻撃を「自衛権の行使」と擁護し、軍事援助を続ける姿勢は変えていない。民主党内の親イスラエル勢力の支持を失うわけにはいかないからだ。
特に選挙資金の影響は大きい。大統領選と同時に行われる下院議員選で、ニューヨーク第16選挙区の現職ジャマール・ボウマンが民主党予備選で敗れた。20年にDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の支持を受け当選したボウマンだが、パレスチナ支持の立場を明確にし闘ったものの、徹底したネガティブキャンペーンにさらされた。
その資金源はAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)。米国最大の親イスラエルロビー団体だ。ボウマン落選に投じた選挙資金は史上最大額ともいわれる。ポイントは、彼が「選挙区のニーズに無関心である」と描き出したことだ。「この選挙をイスラエルとパレスチナに関する住民投票にすることを避けた」(6/26米ネット紙Mondoweiss)のだ。世論調査では若者層を中心にパレスチナ支持が多数派になっている。イスラエルのジェノサイドを争点としては勝てないということだ。
AIPACは支援した149人が予備選で勝利していると公表。米国内のパレスチナ連帯行動は、AIPACを抗議先に加えている。
英総選挙―パレスチナ連帯候補勝利
英国総選挙(7/4)では労働党が圧勝した。パレスチナの和平にとってプラスになるかは、断言できない。保守党のスナク現政権は米国同様、イスラエルの自衛権を認め、武器輸出を継続してきた。労働党も武器輸出即時停止には慎重だったが、選挙公約では「新たな和平交渉に資するべく、パレスチナを国家として承認する」とイスラエル支持のトーンを弱め、2国家解決の道を示した。公約通りであればプラスと言える。
だがウクライナについて現政権以上の肩入れを行うつもりだ。「英国のウクライナに対する軍事的、財政的、外交的、政治的支援は揺るぎないものとなるだろう」。労働党は19年の総選挙で惨敗したことから「ビジネス、国防重視」などの「中道」寄りにシフトした。これが勝因だと報道されているが、そうであれば現政権と同じ、新自由主義の枠内での交代に過ぎない。
2015年、労働党党首に選ばれたジェレミー・コービンは、鉄道の再国有化などの社会主義的政策を掲げている。なにより、イスラエルへの武器禁輸措置をはじめパレスチナ難民の帰還権を認め、イスラエルに対するBDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動を支持するなどパレスチナ連帯運動の賛同者だった。
労働党は19年選挙の敗北で党首を辞任したコービン議員を20年10月に党員資格停止、今年5月除名処分にしている。党内での反ユダヤ主義的行動を放置、黙認したことが理由とされた。イスラエル政府批判が反ユダヤ主義として攻撃されたのだ。
コービンを追放したのが現党首キア・スターマーである。果たして、労働党政権はイスラエルに停戦を迫れるか、パレスチナの国家承認を速やかに実行できるか、見極める必要がある。
総選挙が迫る間際に除名されたコービンは無所属で立候補。労働党候補らに大勝した。その他にもパレスチナ連帯を掲げた無所属候補が労働党を抑え当選を果たしている。数十万人ものパレスチナ連帯デモを組織してきたストップ戦争連合は「私たちの運動がパレスチナを選挙の争点にし、全英の選挙結果に大きな影響を与えたことは明らかだ」と表明している。パレスナ連帯を争点におしあげ、勝利することができるのだ。
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戦争≠ヘ資本主義の最も腐敗した醜い姿であり、貧困の深刻化もまたこの搾取構造そのものを変革しない限りなくならない。
帝国主義諸国が領土を取り合った20世紀初頭、シオニストもまたパレスチナの地に入植を始めた。グローバル資本主義が力ずくで自らの利益をむさぼる貪欲さを見せつけている現在、ウクライナを消費地(市場)とする軍需産業の利益は何倍にもなった。もっとも醜悪な姿がイスラエルのジェノサイドだ。新兵器の実験場、見本市になっている。わずか9か月で、4万人近い人びとが殺害され、2万人以上の子どもたちが行方不明となっている。しかも、これはパレスチナ全土を強奪するための一歩に過ぎないのだ。
このむき出しの奪い合いに日本政府岸田政権は加担し、本格的に加わろうとしている。戦争を止めること、資本主義に代わる社会を実現すること。世界でも、日本でも待ったなしだ。
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