2024年07月19日 1830号

【ミリタリー/基地あるがゆえの性暴力犯罪/「再発防止」はなぜできないのか】

 沖縄で米兵による性暴力犯罪が今も多発していることが発覚した。すでに起訴された2件以外にも昨年以降、3件の米兵による性犯罪が発生し、摘発されていることが明らかになった。

 事件が起こるたびに、日米政府は「綱紀粛正」「再発防止」と口をそろえるが、それで改善が見られたためしはない。明るみに出た事件の数字だけ見ても、減少傾向はみられない。「(沖縄)県警によると、米軍人や軍属による刑法犯の摘発件数は、増加傾向にある。昨年は72件で、過去20年間では最多となった」(7/3毎日社説)という。

 なぜ「綱紀粛正」や「再発防止」が実効性を持たないのか。その理由の一つは、軍隊が内包する暴力性に大きく関係している。

 パンフレット『それってどうなの?沖縄の基地の話』(沖縄基地問題プロジェクト発行)は「アメリカ政府・国防総省は、アメリカ軍の『内部』での性暴力の防止に苦労していて、専門の性暴力防止・対応部を設置しているが、2015年5月に発表された年次報告書では、1年間で米軍の女性兵士約9600人が、性暴力の被害を受けている。実にアメリカ軍の女性兵士全体の4・9%に上る」とし、「軍隊という組織の中で、重いストレスのかかる訓練を受けている兵士が、沖縄の街に多数繰り出している。事件の度に米軍が言う綱紀粛正・再発防止が不可能であることは明らかだ」と結論づける。

自衛隊の事件も根は同じ

 米軍だけではない。自衛隊でも同様の性暴力事件が起きている。閉鎖、隠ぺい体質は米軍以上に強いとされる自衛隊内でも、裁判で争われた女性自衛官への性暴力事件が3件ある。いずれも、勇気ある被害者の告発によるものであり、氷山の一角であることがうかがい知れる。

 06年9月、北海道の基地内に勤務していた女性自衛官が、夜勤中の同僚男性に呼び出され性的被害を受けた事件。10年4月、航空自衛隊浜松基地での上官による性的強要で女性隊員が退職に追い込まれた事件。22年6月、自衛官・五ノ井里奈さんが告発し発覚した隊内での強制わいせつ事件。

 いずれも、組織内機関での解決を求めたが、誠実な対応が得られず、司法の場で被害が認められた。

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 基地や軍隊の組織にはびこる性暴力などの暴力。こうした暴力は、基地や軍隊の外の社会にも染み込んでいく。軍事基地があるゆえの性暴力犯罪を減少させ、根絶するには、軍事基地そのものを縮小、撤去させる以外にない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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