2024年07月26日 1831号
【フランス国民議会選挙 左派連合が勝利/新自由主義を拒否 民主的転換へ】
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フランスの国民議会(下院、定数577)選挙(7/7決選投票)で左派連合「新人民戦線」が40議席増の182議席を獲得し、第1勢力となった。1回目の投票(6/30)でトップに立った極右政党「国民連合」は決選投票では第3勢力に、マクロン大統領の与党連合は78議席減らし、第2勢力に後退した。
この結果をどう見るか。
まず、マクロン政権の新自由主義政策にNOが突き付けられたことだ。2つ目は変革の道は「自国最優先」排外主義に向うのではなく、民主主義の徹底や富の再分配を実現することが切望されていることだ。つまり民主主義的社会主義への展望を示すものになったのだ。
明確になった選択肢
選択肢ははっきりしていた。現政権支持か否か。反対なら極右政党か、左派連合かだ。
国民議会選挙は小選挙区2回投票制の直接選挙である。1回目の投票で有効投票総数の過半数かつ有権者数の25%以上の得票を得られなければ、上位2人と有権者数の12・5%を上回った候補者で決選投票が行われる。
今回投票率が前回(2022年)に比し20%増の66・6%と上昇したこともあり、3人以上での決選投票区が激増。政権批判票が分散すれば1回目同様、国民連合有利と予測されていた。これに対し、市民団体や労働組合が左派連合結成の要請に動いた。「服従しないフランス」、社会党、共産党、緑の党の4党を中心に「新人民戦線」を結成、150項目にわたる共通政策を掲げ、候補者を一本化した。これにより、現政権批判票は右か左の選択が明瞭になった。
振り返ってみよう。マクロンは2017年、史上最年少大統領として登場。「中道」を装いながら、新自由主義政策を次々に打ち出した。大企業・金持ち優先の規制緩和、法人税減税、解雇規制を緩和する労働法改悪。18年には、軽油・ガソリン値上げ、燃料税引き上げの抗議行動から退陣要求デモが全国で展開された(黄色いベスト運動)。
2期目の23年、年金受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる改悪を議会の採決抜きで強行した。全国的なストライキが取り組まれ、抗議デモは最大350万人にも及んだ。パレスチナ問題に関しても、パレスチナ連帯デモを禁止する措置まで取り、抗議行動が起こっている。
市民の行動が力に
欧州議会選挙で国民連合に惨敗したマクロンが国民議会では挽回できると議会解散に打って出た賭けは、完全に失敗した。労働者、市民の現政権に対する怒りと極右政権誕生への危機感は大きかった。新人民戦線の政策発表(6/14)の翌日、数十万人の市民が国民連合に反対するデモを行った。「投票率は記録的なものになった。この勝利は、きわめて多くの人々が立ち上がり、極右勢力の勝利を阻止した結果だ」(7/9新人民戦線声明)。現政権を拒否する人びとは「右」か「左」かの選択に、「左」を選び取ったのである。
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新自由主義政策を進める資本主義諸国はどの政府も経済格差の拡大など、大きな社会問題を引き起こしている。これをどう解決するのか。移民に敵意を抱き、戦争で破壊や殺人に突っ走ることではない。軍事費に予算を投入するのではなく、教育や社会保障こそ拡充すべきである。フランスの選択がこれからの世界のスタンダードになるに違いない。
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