2024年10月18日 1842号
【ALPS処理汚染水差止訴訟口頭弁論 改めて痛感した原発事故被害の広さと深さ】
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ALPS(アルプス、多核種除去設備)処理汚染水差止訴訟第3回口頭弁論が10月1日、福島地裁(小川理佳裁判長)で行われ、42の傍聴席を求めて80人が並んだ。
この日は原告2人が意見陳述。いわき市の丹治(たんじ)杉江さんは「海のない群馬で生まれ育った私にとって、海は憧れだった。25年前にいわきに嫁いだ。汚染水の海洋投棄によって世界中からここが汚れた海と言われないか心配。海洋投棄が始まってから、地元の魚であるメヒカリなどを食べない生活を送っている。国際的な線量限度の20倍に当たる20_シーベルトの被ばくをさせられている私たちに、さらに汚染水の海洋投棄という二重の加害行為は許されない」と国・東京電力の犯罪性を訴えた。
東電が行った「地元漁業者の理解なしには行わない」との文書約束について、丹治さんは「理解とは同意を得ることだったはず。理解を得る対象もなぜ漁民だけなのか」と、漁業者が同意しないままの放出や、漁民以外の意見を聴かない放出のあり方に疑問を投げかけ、放出停止を求めた。
いわき市の長岡裕子さんは、菓子職人として地元・いわき市でとれた塩を原料として作った菓子を販売してきた。原発事故後、いわき沖でとった海水から塩を製造していた業者が廃業した。「地元産の塩を使うことが売り≠セったのに、仕事をやめることになり、菓子職人としての誇りを失った。同業者も廃業し、復活の見込みはない」
福島で汚染水放出の話をすると「風評加害者」とやり玉に挙げられ、不安を口にできないという。思いを表に出せなかった長岡さんが率直に吐露した。
海洋放出を許可した国は「原告側が主張している被害は具体性がなく、被害とはいえないので、放出認可は処分(市民の権利義務に影響を及ぼす行政行為)に該当せず、原告がその取り消しを求めることはできない」と却下を求める。
原告側は、(1)汚染水が放出された海域の海産物を食べることで発生する可能性がある生命・身体の危険(2)海との接触の制限による精神的被害(地元住民)や海産物を自由に選択する権利の侵害(消費者)(3)海産物が売れなくなることによる損害(漁業権侵害)の主に3点を、海洋放出によって原告が受けた「具体的被害」と立証。漁業者以外にも原告適格があるとして国側に反論した。
公判後の報告集会では、この裁判のために実施したクラウドファンディングが、目標の1000万円を超え成功したことが報告された。
第4回口頭弁論は来年1月21日、第5回は6月17日に行われる。
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