2024年10月18日 1842号
【未来への責任(407)/歴史否定の佐渡鉱山文化遺産】
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9月23日、強制動員真相究明ネットワークの主催で「世界文化資産『佐渡島(さど)の金山』の朝鮮人労働の展示を問う!」オンライン討論会が開催された。
まず第二次安倍政権以降の「歴史否定主義」が報告された。政権発足と同時に差別排外主義的政策を露骨に進め、日本の近代史を「世界史におけるたぐいまれな」成功物語として宣伝した。侵略の歴史を書き換えるため加藤康子内閣官房参与(当時)が登録を目指していた「明治産業革命遺産」の世界遺産登録を推進。そして2015年の世界遺産委員会で「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる」と表明しながら、国内では「国民徴用令に基づいて、朝鮮半島出身者の徴用が行われた。これはいわゆる強制労働を意味するものでは全くないというのが、政府の従来どおりの見解だ。当時の日本のこの徴用は、ILO(国際労働機関)の強制労働条約で禁じられた強制労働に当たらないと理解している」と強制労働を否定した。
東京に開設された産業遺産情報センター(加藤康子センター長)では、強制動員被害者の証言や映像の展示はなく「強制動員はなかった、みんな朝鮮人と一緒になかよく暮らしていた」という元端島(軍艦島)島民の証言映像が流された。さらに2018年に韓国大法院判決が出るや否や国会で安倍元首相は「徴用工」を「朝鮮半島出身労働者」と言い換え、2021年4月菅政権は「強制連行」という言葉は不適切であり「強制労働」はILO条約違反ではないとの閣議決定を行った。
日本政府の歴史否定主義のうえに韓国政府の批判を避けるため、対象資産を江戸期に絞って佐渡鉱山の申請がなされ、今年7月の世界遺産委員会では日韓両政府が妥協し登録が承認された。
報告者の一人、竹内康人さんは両政府が合意した「強制労働」の展示について「朝鮮半島出身労働者という呼称を使うことによって強制性を否定し、強制労働を示す史料を展示しても説明しない。しかも展示されているのは郷土博物館の2階の1室だけで証言の展示もない。何より史料として重要な誰が強制動員されたか記録された半島労務者名簿は公開そのものが拒否されたままだ」と批判。佐渡市議会議員の荒井眞理さんは「国任せでなくこれまで地域で積み上げてきた証言の記録や映像が誰でも見れるように民間の資料館をつくりたい」と歴史否定に躍起の日本政府への対案を示した。
登録されたから終わりではない、これから歴史否定にどう立ち向かうかが問われている。
(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)
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