2024年10月18日 1842号

【議会を変える/京都府向日市議 杉谷伸夫/足元から公益通報制度を見直す】

 今回の兵庫県知事を巡る事件で、「公益通報」が一躍注目を集めた。

 ビッグモーターの保険金不正請求事件や、ダイハツの自動車認証試験の不正などは、内部からの公益通報が発覚の端緒であり、公益通報の重要さがわかる。組織内部で起こった不正行為は、それに関係する内部の人間にしかわからない。公益通報は不正をただし、市民の利益を守るとともに、透明で健全な組織にしていくために重要だ。

 一方で、大規模・長期にわたる不正行為が発覚しなかったのは、公益通報制度が機能してこなかったことを示している。公益通報について詳しくなくても、兵庫県の事件のように、告発された本人が「公益通報に当たらない」と判断して告発者捜しを行うなどの行為が、制度に反することは容易にわかる。しかし現実は、このような行為がまかり通っていたり、そう感じさせるような組織風土が強固にあると思う。

 今回、自分の足元である向日(むこう)市の公益通報制度について調べて驚いた。まず、公益通報(内部通報)の窓口は「人事課長」だった。また、通報は実名でなければならない。実名で人事課長に通報することを躊躇(ちゅうちょ)する職員は多いだろう。組織上層部の不正行為ならなおさらだ。

 私の議会質問に対する市の答弁は「人事課は身近な相談窓口」「通報を躊躇するということはない」という。また通報者を保護しなかった行為に対する罰則がないことについて、「規定に違反するようなことがあるとは考えられません」との答弁に絶句した。違法行為が連日報道されているがわが町は別というのか。

 やりとりで感じたことは、自治体行政は常に「公平公正」を旨とし職員に徹底しているので、違法な運用はしてはならないしあり得ないという自負=建前がじゃまをしていることだ。他の自治体も調べたが、多くで組織内部に公益通報窓口を設け、職員が担当している。外部の独立した専門窓口を設けている所は少なかった。兵庫県は公益通報相談員という非正規職員が通報窓口だが、見直すという。

 皆さんも、この機会に自身の自治体の公益通報制度の実態を調べてみてほしい。そして改善を求めてほしい。私も引き続き取り組むつもりだ。組織の問題を内部から正していける風通しの良い自治体は、住民の声が届く自治体につながるものだと思う。
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