2024年10月25日 1843号

【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(8)/見通しの立たない政府・電力資本の原発「最大限活用」】

 9月26日、東京電力新潟県柏崎刈羽(かりわ)原発の使用済み核燃料が青森県むつ市の中間貯蔵施設に搬入された。全国で初めてのことだ。

 この背後には、原発再稼働を急ぐ政府・電力資本の強い意思がある。岸田前政権は、エネルギー価格の高騰と脱炭素を“錦の御旗”に福島原発事故後の「原発依存度を可能な限り低減する」との政府方針を大転換し、「原発の最大限活用」を掲げ、原発敷地内での建て替えや老朽原発の稼働期間の延長(60年へ)などへと舵を切った。石破新首相も同様に「原子力の活用など脱炭素効果の高い電源を最大限活用します」(総選挙への自民党政策パンフレット)と岸田の路線継承を公約としている。

 しかし、政府が方針を転換したからといって「原発の最大限活用」がすんなり進むわけではない。

 何よりも、使用済み核燃料の保管量が容量の8割を超える原発が9か所(東海第二、柏崎刈羽、浜岡、美浜、大飯〈おおい〉、高浜、伊方、玄海、川内〈せんだい〉)にのぼり、その処理が喫緊の課題になっていることだ。むつ市の中間貯蔵施設は東電と日本原子力発電から出る使用済み核燃料を一時的に保管する施設で、他の原発のものの受け入れは地元が反対している。そのため、中国電力と関西電力は山口県上関町の原発を計画していた用地に中間貯蔵施設の建設をもくろむが、中国新聞社の町民アンケートでは、計画について「賛成」「どちらかといえば賛成」が44・3%、「反対」「どちらかといえば反対」が44・8%と賛否は拮抗(きっこう)している。

 関電はいま、各原発敷地に乾式貯蔵施設を建設する計画を示しているものの、杉本達治福井県知事は関電が今年度末までに実効性ある工程表が示さない場合は「乾式貯蔵」を認めない旨表明した。

 もともと全国の原発の使用済み核燃料は、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場に搬入する計画だった。再処理工場はこの9月に完成の予定だったが、日本原燃は完成目標を2026年度中とすると発表した。これで27回目の延期となる。

 プルトニウムの保有制限問題が背景だとする指摘もある。政府の計画では、核燃料を再処理してウランとプルトニウムを取り出し、それを高速増殖炉の燃料として使うという「核燃料サイクル」を確立する予定だった。だが、原型炉「もんじゅ」が度重なる事故で頓挫し、「核燃料サイクル」が破綻してしまったため、プルトニウムはMOX燃料としてわずかに使われるだけで、年々その蓄積量が増えている。プルトニウムは核爆弾の原料になるため、その保有は国際的に監視されており、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」約束になっている。日本は40d以上保有する一方、年間利用実績が0・7dしかなく、これ以上の蓄積は許されない。

 いくら政治家が旗を振っても、原発に未来はないのは明らかだ。    (U)

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