2024年11月01日 1844号

【ミリタリー・ウォッチング/日米軍事演習「キーン・ソード25」に兵4万5千人動員/民間人を何人犠牲にする想定か】

 防衛省・自衛隊はこの10年ほどで、沖縄、南西諸島をはじめ全国でミサイル基地建設、軍事要塞化を強引にすすめてきた。基地建設と並行して年々強化してきたのが演習(軍事訓練)だ。特に日米共同統合演習は、回を重ねるごとに大規模化し、実戦化してきた。最近では、仮想敵国を「中国」と明示し、シナリオの柱を「台湾有事」としている。

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 10月23日〜11月1日にかけ、まさに「実戦間近」を想起させる日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」が実施される。過去最大規模で自衛隊は約3万3000人、艦艇約30隻、航空機約250機、米軍は約1万2000人。在日米軍だけでなくインド太平洋全域の米軍が艦艇約10隻、航空機約120機とともに動員される。

 日米共同統合演習は、ほぼ毎年、実動演習(キーン・ソード)と指揮所演習(キーン・エッジ)を交互に実施。キーン・ソードは17回目だ。自衛隊は「2024年度陸上自衛隊演習」(9月2日〜11月下旬)を日米共同演習と連動させ、北海道から沖縄まで全国の自衛隊員、施設を動員する。

 自衛隊基地、米軍基地だけではない。今回は、「特定利用空港・港湾」に選定された32か所もの民間空港・港湾を使う。かつてないことだ。北海道では釧路港と苫小牧(とまこまい)港など、沖縄では那覇・新石垣・与那国の3空港、中城(なかぐすく)・石垣・平良(ひらら)・久部良(くぶら)・那覇の5港湾を使う。九州では宮崎空港も使う。自衛隊施設のない徳之島でもオスプレイが飛び回る。全国の公道も使われる。航空自衛隊那覇基地から那覇軍港までの公道では、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の発射機を搭載した車列訓練を行う。

 使用する武器も、オスプレイ、PAC3、F15戦闘機、無人偵察機、さらに米軍がウクライナに供与しているロケットシステム「ハイマース」(発射してすぐ移動できる)も使う。

 これは、「演習」名目の武力による威嚇に他ならない。明らかに挑発であり、軍事に関して日米と同じ発想の中国は確実に対抗措置をとるだろう。一触即発、緊張激化が必至だ。

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 「キーン・ソード25」の演習シナリオには、この事態で何人の日米軍人が死に、何人の住民、民間人が死ぬのかを想定しているはずだ。だが、それは決して公表されない。

 沖縄戦の実相は、軍事作戦と住民保護が決して両立しえないことを明確に教えている。自衛隊は、沖縄戦当時の旧日本軍の行動が「間違いだった」と公式に認めたことはない。

 沖縄戦の実相を多くの全国の市民に知らせること。これが、軍拡と戦争挑発に対抗する確かな手だてである。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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