2024年11月01日 1844号

【ニックのアメリカレポート(第9回)/地域にBDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動広げる/パレスチナ解放と労働者の解放へ】

 米北西部最大の都市シアトルのDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)支部はこの夏、BDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動への地元の支持を広げるキャンペーンを開始した。

 BDS運動とは、パレスチナ人の民族浄化、ジェノサイドに加担している企業などに経済的圧力をかけるための国際キャンペーンだ。「戦争による不当利得者ボイコット」キャンペーンは、BDSリストに載っている企業に対するボイコットを地元で広め、最終的にはシアトル市の投資の民主的管理を目指す多段階のキャンペーンとして構想されている。キャンペーンの詳細を知るために、シアトルDSAのパレスチナ連帯作業部会運営委員会メンバーであるカール・トーマスさんにインタビューを行った。

消費者がボイコット

 キャンペーンの第一段階はパレスチナ人の民族浄化に加担する企業への消費者ボイコットをシアトルで広めることである。その一環として、7月ごろから街頭で署名活動を開始した。パレスチナ連帯作業部会はターゲットとなる大手企業の一部を記載した小さな「誓約カード」を作成し、街頭で住民に署名を訴えている。

 誓約カードには、キャンペーンの詳細や活動に参加するためのQRコードが載っていて、署名時には、電話番号やメールアドレスといった連絡先の他に、「活動に参加したい」「BDS運動について3人の友人と話す」などの項目にも記入できる。10月11日時点で、すでに1600の誓約署名が集まっている。

 カールさんによると、キャンペーンを通じて運動に新しく参加してきたメンバーも多い。「これは私たちの戦略の有効性を示しています。人びとは運動に参加する方法を求めています」。署名を集める目的は、シアトルの住民にBDS運動を広めるだけではなく、キャンペーンの次の段階で動員できる支持者リスト作成のためでもある。

ターゲット企業へ行動

 キャンペーンの第二段階は、シアトルの地元商店に対して、BDSリストの対象製品の取り扱いをやめるよう求める運動だ。この段階には二つの側面がある。

 一つ目は、パレスチナ解放を支持しBDSリストの製品の取り扱いをやめて代替製品に移行する方法を知りたいと考えている地元中小企業のネットワークを築くことだ。しかし、パレスチナ連帯に立ち上がることは、政府による弾圧や地元企業局からの報復を恐れる企業にとってはリスクのある動きでもある。連帯作業部会は現在、パレスチナ解放の抗議運動にすでに友好的な地元企業のリストを作成中であり、これらの企業がBDSへの支持を公に宣言したときに、支援者を動員して援護できるように準備を進めている。

 一方、自発的に製品を取りやめる意思のない他の企業には、キャンペーンとして圧力をかける必要がある。「いざとなれば、ほとんどの企業はパレスチナのことなど全く気に留めません。市場の論理で動いているのです」とカールさんは語る。こうした企業変化を起こさせるには圧力が必要であり、連帯作業部会は現在、圧力をかける戦略的ターゲットを特定している。

 国際石油資本シェブロンやマクドナルドのような巨大多国籍企業にイスラエル政権からの撤退を迫ることは今の時点では現実的に不可能だが、スーパーマーケットのセーフウェイやQFCなど大手食料品チェーンは実行可能なターゲットと位置づけている。これらの店舗で働く労働組合員と協力してイスラエル製品の在庫を拒否し、店舗前でデモを行って経営陣に圧力をかけることを考えている。

シアトル市の投資撤退へ

 キャンペーン第三段階の長期的な目標は、シアトル市が行っている投資をBDSリストに載る企業から撤退させることだ。カールさんはこう話す。「圧倒的多数の人びとは、この戦争が終わることを望んでいます。市民は、現在イスラエルに送られているお金が学校や病院に落とされている爆弾の支払いではなく、私たちの地域を助けることができる計画に投資するために使われることを望んでいます」。この運動を通して、自治体の投資への民主的管理を目指すのだ。

政治変革につなげる

 カールさんは「このキャンペーン開始のきっかけは、全米でガザ虐殺への抗議活動が何か月も続くにもかかわらず、政治家たちは全く耳を傾けていないことが明らかだったからだ」と言う。

 軍事企業は多くの米国政治家にとって最大の資金提供者の一部だ。これらの政治家は市民の意思を無視してきた。絶え間ない抗議活動は、イスラエルによる恐ろしいパレスチナ人虐殺に憤る多くの人びとを活気づけたが、抗議活動だけでは直ちに虐殺を終わらせるのに必要な圧力までには至らない。「私たちのいわゆる代表制民主主義の限界を理解した上で、私たちが権力を手にするために実際に何ができるでしょうか?」。カールさんはこう問う。

 「私は社会主義者、マルクス主義者として、そして私たちの多くにとっても、独立した構造と独立した権力基盤を築くことが不可欠であることは明らかです。そのために、私たちは大衆的組織をつくりたい。民主的な組織をつくりたい。効果的な方法でパレスチナ解放のために闘いたいのです」

BDS運動は戦略

 パレスチナ連帯作業部会は、BDS運動の国際的広がりと歴史的成功に注目し、BDS運動が勝利を勝ち取るための実行可能な戦術と認識している。「BDS運動は実証済みの戦略です。人びとを動員し、政治権力を築き上げる方法です。社会主義者としては、帝国主義と戦争の関係性、そこから利益をえる大企業の関係性、そしてそれらが労働者の必要とどれほど矛盾しているか、を伝えることを進める方法なのです」

 BDS運動を通して、パレスチナ解放を目指し、大衆を組織化し、労働者の権力を勝ち取るのだ。







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