2024年11月01日 1844号

【読書室/地域から考える少子化対策 「異次元の少子化対策」批判/中山徹著 自治体研究社 1000円(税込1100円)/住民要求に応え自治体から対策を】

 2000年から06年までは団塊世代の子どもである30代女性が増えていた。合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に産む子どもの数)は減っていたが、出生数は大きくは減らなかった。今は急激に減少し、今後も減っていく。この事実に向き合わないと「少子化対策」の効果は検証できない。

 収入が少ないので結婚できない、結婚しても雇用が不安定など、子どもを産み育てる条件が劣化している。これは社会の再生産(社会を維持し発展を作りだす)に直結する。少子化で社会の再生産が弱体化している。

 自公政権が打ち出した「異次元の少子化対策」は、問題をすりかえ、わずかのアメの部分を含みつつも、新自由主義的政策の枠内での対策である。若者―子育て世代の支持を取り付けるための政治的な宣伝でしかない。著者は、この対策を撤回すべきと断言する。

 では、対案は何か。収入が少なく雇用が不安定な状態に置かれている若者が求めるものを考えればいい。それは、何よりも安定した雇用で適正な賃金を得られることだ。実現するには、非正規雇用でなく正規雇用への転換、全国一律の最低賃金大幅引き上げなど、新自由主義的な雇用政策を根本的に改める必要がある。

 そのうえで出産と育児、教育への対策を充実させなければならない。とりわけ、教育費が家計に多くの負担を強いており、高等教育も含め無償化すべきだ。

 そのための財源は、大企業と富裕層への適正な課税、不公平税制の解消に求める。同時に、地域事情に合わせて住民要求に応え、国基準を上回る実効性ある対策のために自治体の役割を明確にさせる。著者が提唱する対策案に同意する。(T)
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