2024年11月08日 1845号

【自衛隊が欲する攻撃型ドローン/有力候補はイスラエル製/パレスチナ人を「実験台」に】

 防衛省は来年度予算の概算要求に、小型無人攻撃機(攻撃型ドローン)の取得費30億円を計上した。すでに運用実証を終えたイスラエル製が有力候補と見られている。同国製のドローンはガザ攻撃で市民殺戮に使われている。虐殺への加担を許してはならない。

概算要求に計上

 2022年12月に策定された国家防衛戦略は「無人アセット防衛能力」の抜本的強化を掲げた。これは攻撃型ドローンの導入を意味しており、防衛省は今後5年間で総額1兆円を投じる予定だ。目的は「島しょ防衛を強化するため」(8/17産経)とされる。南西諸島(琉球弧)に侵攻してきた敵(中国軍を想定)の排除に用いるというわけだ。

 来年度予算の概算要求に約310機分の調達費が計上された機種は、爆弾を搭載し自ら標的に突っ込んで破壊する「自爆型」。欧米では「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれる。将来的には、人を介さず兵器が敵を峻別することができる人工知能(AI)の搭載も検討しているという。

 昨年度から136億円をかけて運用実証が行われている。全9機種の候補機のうち5機種がイスラエル製だ(小型攻撃機が4機種、多用途・攻撃機が1機種)。防衛省は「実証実験で選定するものではない」と言うが(あらためて一般競争入札を行う)、イスラエル製は性能と運用実績で高い評価を受けている。

 実際、一時は防衛装備庁のエースとも言われていた防衛官僚(堀地徹)が次のようなコメントを残している。2014年6月にパリで開催された国際武器見本市「ユーロサトリ」で、イスラエルの無人機ブースを訪れた際の発言だ。

 いわく「イスラエルの実戦を経験した技術力を日本に適用することは、自衛隊員のためにもなるし、周りの市民を犠牲にしないで敵をしっかり捉えることは重要。(イスラエルの)機体と日本の技術を使うことでいろいろな可能性が出てくると思う」。

ガザ市民への攻撃

 攻撃型ドローンが「市民を犠牲にしない」とは嘘八百の最たるものだ。イスラエル軍は現在、小型の対人ドローンを主力兵器としてガザ地区に大量投入している。標的はイスラム組織ハマスの戦闘員だけではない。非武装の民間人を意図的に攻撃している。

 スイス・ジュネーブに本部を置く人権団体ユーロメッド人権モニターが聞き取り証言をもとにまとめた調査報告書によると、イスラエル軍は「パレスチナ民間人に対する計画的殺害を組織的かつ広範囲に、確実に実施するために、攻撃型ドローンを本格的に使用している」という。

 この調査報告書の抄訳が月刊誌『地平』11月号に掲載されている。市民の被害実態を一部紹介しよう。昨年12月、パレスチナ赤新月社本部内に避難していた13歳の少年がドローンからの発砲で胸を撃たれ、死亡した。難民キャンプから白旗を掲げて脱出しようとしていた52歳の女性もドローンの射撃で頭を撃ち抜かれ、亡くなった。

 国連が配給する小麦粉を受け取るために集まってきた市民をドローンが襲ったケースも報告されている。最近では、避難先から自宅の様子を見に戻ろうとする人や、イスラエル軍の命令に従わず土地に残ろうとする人びとを標的にすることが多いという。

 イスラエルの代表的軍事企業であるエルビット・システムズ社の自爆型ドローン「LANIUS」などは、自律飛行で建物の内部にまで入り込み、標的をAIシステムで特定することを売りにしている。

 これはあくまでも人殺しの性能であって、民間人の被害を減らすものではない。防衛省・自衛隊がイスラエル製の軍事ドローンを高く評価するのも、殺傷・破壊能力の高さが「実戦で証明済み」だからである。

虐殺加担をやめよ

 パレスチナ民衆を実験台にした殺人兵器を大量に買い、武器輸出が主力産業のイスラエルを潤す―。これが現在進行中の虐殺や国際法違反の占領政策への加担でなくて何であろう。

 導入候補のイスラエル製ドローンは次のとおり(カッコ内は製造企業と日本の輸入代理店)。▽スカイストライカー(エルビット・システムズ/日本エアークラフトサプライ)▽ロテム・エル(IAI=イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ/海外物産)▽ポイント・ブランク(同)/▽ヒーロー120(Uビジョン/住商エアロシステム)▽ヘロンMKU(IAI/川崎重工業)。

 試験報告書を提出した企業にはその契約金がすでに支払われた。私たちの税金をこれ以上、戦争犯罪企業に渡してはならない。主権者の責任として、攻撃型ドローン導入反対の取り組みを強める時だ。  (M)

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