2024年11月22日 1847号

【最高裁が不当判決/無期転換のルール破り雇い止め/有期雇用契約への抜本的規制強化を】

 有期雇用契約が通算5年を超えたのに無期契約に転換されず不当に雇い止めをされたとして、羽衣国際大(堺市)の元講師の女性が学校法人に地位確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は10月31日、無期転換を認めなかった大学側の対応を是認する判断を示し、女性に5年での無期転換を認めた二審・大阪高裁判決を破棄し審理を差し戻した。

 2010年4月1日から羽衣国際大学の非常勤講師として勤務していた女性は、13年3月から専任教員として有期労働契約を学校と締結し、通算期間が5年を経過した。18年11月、無期転換ルールを定める労働契約法18条1項に基づき無期転換権を行使したが、法人は、大学教員等の任期に関する法律(任期法)の10年特例の適用で無期転換権は発生していないとして19年3月末で雇い止めした。これに対し、女性が地位確認と賃金の請求をしたものだ。

 大阪地裁は22年1月、原告の請求を棄却したが、大阪高裁は、23年1月、女性の無期転換を認め、地位確認と賃金支払いを命じる逆転勝訴判決を言い渡した。

後だしで「10年特例」

 労働契約法は有期雇用契約が通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば無期雇用への転換を申請できると規定。一方、任期法では「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」は特例で10年とされ、女性の職がこれに該当するかどうかが争点だった。大阪高裁判決は、「10年特例」は労働契約法18条の例外であることから、これを限定的に解釈するべきであり、介護福祉士養成課程を担う原告が就いていた職は「教育研究組織の職」には該当しないとした。

 ところが最高裁は、高裁判決を否定し、任期制の採用やその場合の具体的な内容・運用につき、「各大学等の実情を踏まえた判断を尊重する」べきだとして、「任期法の教育研究組織の職の意義についてことさら厳格に解するのは相当ではな」く、この講師職は任期法のいう「教育研究組織の職」に該当すると判断した。

 しかし、最高裁判決ではどのような場合に「教育研究組織の職」に該当するのか基準は明確ではなく、結局のところ大学側が恣意(しい)的に「10年特例」を運用する余地を認めてしまう。

 この事件でも、原告の採用時や二度にわたる契約更新時に「10年特例」が適用されるといった説明は一切なされていなかった。原告が5年無期転換を申し入れた後になって、大学側は急に「10年特例」を主張し始めた。このような恣意的運用が許されると、いつの時点で無期転換権を行使できるのか不明瞭となり、原告のような有期雇用の大学教員の地位は非常に不安定になってしまう。

雇い止め横行を許すな

 国立大学協会の調査によると、23年度の任期付き教員の割合は32・3%で、18年度から5・5ポイント上昇している。40歳未満の教員では23年度、59・3%が任期付きである。

 教育労働者の雇用を脅かすこうした最高裁判決を許してはならない。

 23年理化学研究所の100人にも及ぶ雇い止めのように、無期転換権が発生する直前での雇い止めが横行している。現状では、これも事実上容認されている。仮に無期転換されたとしても、仕事は継続できるが労働条件は変わらない。この事件のように無期転換を要求して雇い止めにあうような事例をみれば、黙って有期契約の更新を選択せざるを得ない労働者も出てくる。

 有期雇用契約自体を例外とする規制強化を勝ち取っていかなければならない。

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