2024年11月29日 1848号

【沖縄 辺野古新基地建設に焦り=^石破政権後押しする国民民主党】

こっそり土質調査

 沖縄・辺野古新基地建設が新たな動きを見せている。

 石破政権の続投を待っていたかのように、11月13日、辺野古崎で土砂投入が始まった。普天間飛行場にはない新たな機能「弾薬搭載エリア」となる場所だ。

 8日には2件の中仕切り護岸工事と3件のサンドドレーン工事の入札が告知された。防衛省はいよいよ軟弱地盤での工事に踏み込む。

 3件のサンドドレーン工事の面積は合わせて約18f。軟弱地盤対策が必要な面積57fの3分の1程度。砂杭も3件合計1・3万本。必要とされる7・1万本の2割に満たない。

 最大の問題である北端C護岸については、いまだに迷走している。海底90bに達する軟弱地盤層の最深部「B27」。地盤の強度試験は「必要ない」と居直っていた防衛省は、8月下旬から新たに土質調査を行っていることを認めた(9/6)。

 沖縄県玉城デニー知事が埋め立ての設計変更申請を不承認にした理由の一つがこの地盤調査の不備だ。防衛省は「別の調査という位置づけ」と言い逃れているが、実際に工事する段階が近づき、推定値による設計・施工では不安が拭えなくなっているのだ。

 

軟弱地盤対策に不安

 もう一つ、防衛省が動いた背景に、米国側からの指摘があるのは間違いない。

 今年6月、連邦議会下院軍事委員会のジェームズ・モイラン議員(共和党)が米国会計検査院(GAO)に「辺野古新基地建設の検証を求める」書簡を送った。GAOは2017年に辺野古新基地の「能力欠陥」を指摘している。モイラン議員は、その課題は未解決のままであり「改めて公平かつ技術的な専門家の評価がいる」と要請した。「(辺野古工事の)進捗(しんちょく)状況の詳細な説明」など7項目について報告を求められたGAOが日本政府への照会抜きに回答できないのは言うまでもない。

 防衛省は、国内向けには軟弱地盤の補強工事など「問題ない」と押し切ってきたが、米国からの「不同沈下による将来の海兵隊活動への影響や長期的維持費の増加の有無」などの問いに同じ対応では済まされなくなったということだ。

 トランプ政権への移行が辺野古新基地建設にどんな影響を与えるかは分からないが、少なくとも維持費が膨れ上がるような「軟弱地盤対策工事」を米国が納得することはないだろう。

調査結果を公表せよ

 軍事的にも日米の対等な関係をめざす石破茂首相には「在沖米軍基地の共同使用」という持論がある。すでに辺野古新基地への陸上自衛隊常駐構想が暴露されているが、石破政権はこれを公然と進めるつもりだ。

 石破は幹事長時代(13年)に辺野古新基地建設に反対する沖縄県選出国会議員をねじ伏せた前歴がある。だが、少数与党としての制約を受け、強引な手を使う状況にはないのも事実だ。この辺野古新基地問題でも少数与党に助け舟を出しているのが国民民主党(国民)だ。

 国民は衆院選の政策発表(10/8)では「埋め立ては一旦停止、日米間で合意できる『プランB』の話し合いを行う」と辺野古見直し方針を表明していたが、3日後には、「一旦停止」も「プランB」も消した。榛葉賀津也(しんばかづや)幹事長は「辺野古移転はすぐやらねばならない」「計画の見直しは求めない」(11/8)と語っている。

 政府がどう言おうと、軟弱地盤の存在はごまかしようがない。沖縄平和市民連絡会は、9月沖縄県議会に、防衛省の調査結果を取り寄せ検証するよう陳情を行なった。防衛省は「公表しない」と表明しているが、防衛省が主張する「70b以深は固い地盤」を証明する上でも、進んで公表するべきではないか。事実を明らかにさせ、「埋め立て中止」「計画見直し」に踏み込ませる時だ。

  *  *  *

 国土交通大臣による代執行の取り消しを求める抗告訴訟。最高裁で実質審理が行われるかどうか重要な局面にある。

 沖縄県は11月13日、上告受理理由書を提出した。一審、二審とも「原告不適格」として県の訴えを退けている司法に対して、国と対等な地方自治体として、訴えの権利があると主張している。土質データの開示により、国交大臣の裁定が間違った情報によるものだったとなれば、不当な介入であったことの立証もできる。

 辺野古埋め立ては、面積にして7割以上が手つかずの状態だ。止めるのは今だ。
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