2024年11月29日 1848号

【最高裁判事の国民審査罷免率/34年ぶりに10%を超える/原発・沖縄など批判世論と運動が反映】

 10月27日に実施された議院選挙と同時に最高裁判事の国民審査が行われた。最高裁判事は任命後、最初の衆院選の際に国民審査を受ける。

 罷免率が最も高かったのは最高裁長官を務める今崎幸彦(11・46%)で、尾島明(11・00%)、宮川美津子(10・52%)、石兼公博(10・01%)が10%を超えた。今年8月以降に就任したばかりの平木正洋、中村慎は10%を下回ったが、6人の平均は10・46%と前回2021年の6・78%を大きく上回った(1・54倍)。平均罷免率が10%を超えるのは34年ぶりのことだ。

 6人全体の罷免率が最も高かったのは沖縄県(17・60%)、次が東京都(14・88%)だった。また、前回と比べ首都圏で罷免率が伸びているのが特徴で、神奈川県(1・75倍)、千葉県(1・73倍)、埼玉県(1・67倍)、東京都(1・63倍)。沖縄県は毎回高い罷免率だが、今回の17・60%は21年ぶりの高さだった。




過去から最高裁に不信感

 こうした変化の背景には何があったのだろうか。

 沖縄では、沖縄県が関わる裁判で裁判長を務めた宮川判事の罷免率が19・52%と最も高かった。

 宮川判事が裁判長を務めた最高裁第1小法廷は今年4月、名護市辺野古の新基地建設に向けた沖縄防衛局による大浦湾からのサンゴ類の移植を巡り、農林水産相が県に特別採捕を許可するよう「是正の指示」をしたことは違法だとして、県が指示の取り消しを求めた訴訟で県の上告を不受理とした。また9月には、石垣市への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を巡る訴訟でも市民の上告を棄却。宮川判事は、2月に辺野古を巡る国土交通相による史上初の代執行についての沖縄県の上告受理申立を不受理とした判断にも関わっている。同様に19・21%と際立って高い尾島判事も昨年の沖縄関係の裁判で上告棄却・不受理としている。

 2人以外も全国に比して高いのは、基地問題で民意に基づく県の提訴・上告をことごとく退けてきた過去の経過から最高裁への不信が強いからだろう。

司法の劣化に怒り

 首都圏の変化の背景には、「司法の劣化」批判がある。

 2022年の6月17日最高裁第2小法廷は、原発避難者訴訟の先行4訴訟(生業〈なりわい〉、群馬、千葉、えひめ)について「国に責任なし」とする不当判決(多数意見)を下した。その後、背景として、政府が東京電力や国の代理人を務める巨大法律事務所から弁護士を最高裁判事に送り込み巨大法律事務所は退官する最高裁判事を顧問に迎えるなど、原子力ムラの司法を抱き込む策動が明らかになった。

 2周年を期して6月17日には1000人の市民が最高裁を包囲して抗議した。また、第2小法廷に係属している東電刑事裁判の支援団が「東電と親密な関係のある草野耕一判事は東電刑事裁判から手を引け」と要求し、8月1日には原発事故関連訴訟の原告・弁護士らが6・17判決に関与した草野耕一、岡村和美判事(菅野博之元裁判長は退官)弾劾訴追を請求。最高裁判事への批判や関心が高まっていた。

 今回の国民審査に際してはSNSなどを通じて、いわき市民訴訟の最高裁上告棄却を決定した今崎最高裁長官、だまっちゃおれん訴訟や津島訴訟、九州訴訟で東電の代理人を務めるTMI法律事務所(巨大法律事務所の1つ)出身の宮川判事には「×をつけよう」という呼びかけがされた。

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 平均で10%を超えた程度とはいえ、この変化は大きい。罷免率が増えれば、裁判官も世論を気にしないわけにはいかないからだ。

 来年の6・17最高裁共同行動に向けた実行委員会も動き出した。当面、12月18日の原発賠償京都訴訟控訴審判決が焦点になる。大阪高裁に結集しよう。

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