2024年11月29日 1848号

【「市民運動はむしろ推奨されるべき」/警察の個人情報収集を断罪/大垣警察市民監視事件で画期的勝訴判決/名古屋高裁】

 「原告らの活動に、非難されるべきものはなく、むしろ推奨されるべきものも含まれている」。名古屋高裁は9月13日、住民運動に対する公安警察の監視を違憲・違法とする原告勝訴の画期的判決を言い渡した。

 岐阜県警大垣警察署が風力発電施設の建設計画をめぐり学習会を開くなどした住民の個人情報を収集し、事業者である中部電力子会社シーテック社に提供していた「大垣警察市民監視事件」。控訴審判決は被告岐阜県に対し、請求された賠償の満額を支払うよう命じた。県は10月2日、上告を断念。判決は確定した。

 判決では、原告の活動について「原発は危険な施設で、事故を起こせば回復困難な影響を生じさせる。原発建設に反対することは極めて正当な行為」と評価。

 本件の風力発電事業をめぐっても「低周波の健康被害の懸念は払拭されない。影響を受ける立場にある者らが勉強会を開いたり専門家を招いたりする活動は、自らの権利を侵害されないようにするため憲法で集会・結社・表現の自由として保障されている。より透明性のある公共の場での実質的な議論を可能とし、より広い地域住民の関心の高まりも期待でき、社会的にも望ましい」と指摘した。

 一方、シーテック社に対しては「原告の居住地区を周辺の地域から孤立させようとしていた。地域を分断し、地区単位の村八分を目論むもの。さらに、山林に無断で立ち入り、杭打ちまで行っていた」と指弾。

 警察の情報収集・情報提供に関しても「民事紛争の一方の当事者に対する他方の当事者情報の提供は、警察活動の不偏不党・公平中正を定めた警察法2条2項に真っ向から違反」「自然保護運動等の正当な活動を妨害する目的での情報収集は、環境基本法の基本理念や地方公共団体の責務、公共の福祉にも反する」「思想信条に関連する情報は特に要保護性が高い。このような個人情報の提供行為は非常に悪質」「県警による個人情報の保有はプライバシーを侵害するもので、違法。原告らは人格権に基づく妨害排除請求として、県に対し個人情報の抹消を請求できる」と断罪した。

 11月6日に開かれた院内集会で中谷雄二弁護士は「判決を活かし、警察に対する第三者監視機関が必要だという声を大きく広げてほしい」と呼びかけ。原告の近藤ゆり子さんは「長谷川恭弘裁判長は判決の日をもって退官。結構思い入れがあったのではないか。今後、経済安保法でも“アウトリーチ=警察から積極的に企業に働きかける”と言っている中で、どう歯止めをかけるか考えなければいけない」と訴えた。

 判決文は《「もの言う」自由を守る会》のウェブサイトでダウンロードできる。

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