2024年12月06日 1849号
【ネタニヤフ首相に逮捕状/国際刑事裁判所“今も犯罪が続いている”/イスラエルに世界中から圧力を】
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国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出した。イスラエルは、米国の次期大統領がトランプに決定した11月初めから、パレスチナ人浄化をエスカレートさせている。ガザだけでなく、ヨルダン川西岸でもだ。目の前で進行するジェノサイドを一刻も早く止めなければならない。
犯罪者を逮捕せよ
ICCの予審第1法廷は11月21日、イスラエルからの異議申し立てを全会一致で棄却し、ネタニヤフ首相、ガラント元国防相(11/6解任)に逮捕状を発行したと発表した。ICC設立の根拠ローマ規程の締約国124か国は自国に2人が立ち入った時には逮捕する義務を負うことになった。日本もそうだ。
ICCは、逮捕状発行は通常、目撃者の保護などのため秘密事項だが、「逮捕状記載の犯罪が今も継続している」ことや「被害者、家族の利益になる」との判断で公表したと言っている。
ICCへの逮捕状請求は5月20日。裁判所は昨年10月8日から今年5月20日までの容疑を審査し「飢餓を手段に用いた戦争犯罪」「民間人攻撃を意図的に指示した罪」など合理的根拠があると認めただけでなく、今もこの行為が継続していることにも言及したのだ。
ローマ規程に署名していないイスラエルは「ICCの管轄権は及ばない」と異議申し立てをしたが、パレスチナが2015年にローマ規程に加盟、21年以来イスラエルの国際法違反の捜査が開始されていることから、決着済みと一蹴された。
EUのボレル外交安全保障上級代表は「裁判所の決定は尊重され、履行されなければならない」と語っている。ネタニヤフを逮捕対象と受け入れた意味は大きい。
民族浄化に拍車
ところが、イスラエルの最大の支援国、米バイデン大統領は「言語道断。イスラエルとハマスは同等ではない」とICCを批判した。当のネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義だ」と反発。パレスチナ人浄化、占領地併合に一層拍車をかけ始めている。
イスラエルは、ガザ地区で、避難者のテントを何か所も爆撃し、女性や子どもを殺害している。食糧や水など命をつなぐ物資の輸送を妨害し続け、飢餓状態に追いやっている。
11月12日、国連安全保障理事会でジョイス・ムスヤ人道問題担当事務次長兼緊急援助調整官は「ガザの大部分は瓦礫(がれき)だ。イスラエルが燃料搬入を妨害しているため、救助の重機が動かせず、多くの家族が瓦礫の下に閉じ込められたままだ」と報告している。
ムスヤ次長はヨルダン川西岸地区の状況悪化にも触れた。「イスラエル人入植者によるパレスチナ人とその財産への攻撃が激化し、10月だけで160件以上の事件が記録されている」と指摘した。
11月20日、北部ジェニンではイスラエル軍の攻撃ヘリが頭上を飛び交い、軍のブルドーザーが電柱をなぎ倒し、電気を止めた。医療従事者を拘束し、拷問を繰り返している。「パレスチナ人は、今後数か月で併合と民族浄化のキャンペーンが加速されることを恐れている」(ネットニュース「ドロップ・サイト」11/21)。
ネタニヤフが強気で出ているのは、次期米大統領トランプを筆頭に、政権の重要なポストをシオニストが占めることが明らかにされているからだ。
次期駐イスラエル大使のハッカビー。強烈なクリスチャンシオニストで「パレスチナ人など存在しない」と公言する人物だ。「ガザも西岸も併合」を提唱している。国連大使、中東特使、国務長官などいずれ劣らぬシオニストで、パレスチナの存在を認めていない。
BDS運動の力
だが、米国とイスラエルが世界から孤立しているのは明らかだ。設立後21年間、親欧米諸国の高官を一度も起訴してこなかったICCが今回、イスラエル首脳に逮捕状を発行したことは重大な転換点を示している。
このICCの他にもイスラエルの戦争犯罪をただす国連人権委員会などの報告が相次いでいる。これに力を与えるには、労働者・市民の闘いの世界的広がりが必要である。
BDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動が世界的に連動したのは国際司法裁判所(ICJ)の決定を守らせるためだった。04年7月9日、ICJは、イスラエルが西岸地区に設置した分離壁は「違法であり撤去すべき」との勧告的意見を国連総会に出した。その1周年の日に、パレスチナの170団体が、「イスラエルに国際法や普遍的な人権原則を守らせるため」として、全世界に呼びかけた。
ここ20年のBDS運動は、いくつもの成果をあげている。最近では、BNC(パレスチナBDS全国委員会)が22年12月以来、ボイコット対象としているフランスの世界的なスーパーマーケットチェーン「カルフール」の例があげられる。
カルフールは、イスラエルの植民地支配を支えるテクノロジー企業や銀行と連携協定し、イスラエル兵に無料パッケージを提供したり、イスラエル支援の寄付集めまでしていた。ヨルダンBDSはカルフールと連携するアラブ資本に手を引かせ、カルフールの全店舗閉鎖を勝ち取った。
米企業シェブロンと独企業シーメンスが対象企業にあがっている。シェブロンは東地中海でイスラエルが所有権を主張する石油ガス田の主要な採掘企業だ。採掘権の支払いでイスラエルに何十億ドルもの収入をもたらし、軍事占領を支えている。シーメンスはイスラエルの電力網と欧州の電力網をつなぐ海底ケーブルの建設工事を請け負う。イスラエルのガス発電による売電収入を保証することになる。
世界の隅々から
シェブロンに対する行動は、ウーバードライバーなどを組織するIAATW(国際アプリベース運輸労働者連合)が24年3月、シェブロンブランドのガソリンスタンドボイコットを表明した。組合員は20か国10万人に及ぶ。米国内ではDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)などがボイコットに取り組み、大きな広がりを見せている。
日本では、イスラエルの軍事産業との取り引きが疑われるファナックや川崎重工などへの要請行動が粘り強く行われている。11月6日には、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)がNEC、三菱重工など13社に対し、イスラエル軍需産業との協力関係の撤回を申し入れた。
犯罪者を逮捕せよ。執行力を持たないICCなどの判決に力を与えるのは世界の労働者・市民の支持、闘いである。
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