2024年12月06日 1849号

【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(11)/泊原発訪問記】

 2か月前の9月16日、「原発問題全道連絡会」主催の北海道電力・泊(とまり)原発見学に参加した。

 27人の参加者を乗せたバスは札幌駅を出発、開通間もない後志(しりべし)自動車道を走る。

 北電の原子力PR館「とまりん館」(泊村)では、北電社員が館内展示の説明をする。寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で文献調査が進む高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の地層処分について「私はこの11月で定年退職ですので、個人として率直に申し上げますと、技術的に難しいと思います」と漏らした。定年前と前置きした意図はわからないが、「率直に難しい」と語ったのが印象に残った。

 原発構内に立ち入るため、作業員と同じ立入証(臨時立入用)の申請手続をする。27人分の申請書と身分証明書を北電社員2人で照合し、二重チェックする。福島原発事故を起こしたのに緊張感もなく、他の作業員の立入証を借りて構内に入る作業員を見逃していた東京電力の杜撰(ずさん)さを思うと、この程度の厳密さは当然だ。

 3基の原子炉を直下に見下ろせる展望台に着く。原子力規制委員会から造り直しを命じられた防潮堤を取り壊した直後で、泊は「丸裸」状態だ。海抜10bの敷地の上に、3基の原子炉全体をカバーする9bの防潮堤を造る。福島第1原発には防潮堤はなく、公表された計画さえなかった。北電はそこまで杜撰ではないようだ。完成後は敷地の海抜と防潮堤の合計で高さ19bになる。福島第1を襲った津波は15bだから防げるというのが北電の説明だ。だが、南海トラフ地震の津波予想は最大30b。北海道南西沖地震(1993年)でも「29bとも31bともいわれる大津波が来襲」(奥尻町ホームページ)したという。

 不可解なのは、格納容器の防護壁の厚さが1・2号機で13aに対し、それより出力の大きい3号機が10aしかないことだ。何を基準に決めたのか。

 タービン建屋の下部、保守用車両の出入口ドアが普通のシャッターに見えたので説明員に尋ねると「ええ、普通のシャッターです」とあっさり認めた。福島第1で全電源が喪失した原因は津波侵入だ。こんな重要な施設が、なぜ防水し、水を侵入させない水密化していない普通のシャッターなのか。「規制基準では義務ではないので」が回答だった。

 義務でないことはやらない北電の姿勢はもちろん問題だが、規制委は福島から何を学んだのか。徹底追及しなければならない。

 泊を出発後は、使用済み核燃料運搬船のための港湾建設予定地を見た。船の衝突で防潮堤が壊れるのを防ぐため、今後、使用済み核燃料運搬船は原発構内の港を使えなくなる。完成後は4〜5千トン級の船が入れると聞き胸騒ぎがした。核のごみを寿都、神恵内に持ち込むのが新港の本当の狙いではないか。

  (水樹平和)

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