2024年12月13日 1850号
【石破首相 軍事力強化を表明/辺野古新基地「着実に工事進める」/軍事費削れ 「防衛増税」するな】
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臨時国会で石破茂首相の所信表明があった(11/29)。外交安保政策では、軍事力強化、軍事同盟強化による抑止力を維持すると表明した。九州・沖縄から日本全国で進行する軍事基地強化は、石破政権下で一層加速されるに違いない。「103万円の壁」問題では少数与党として「謙虚さ」を見せたが、軍事については「多数与党」状態だ。反対野党は限られている。軍拡やめろ。軍事費削減。24年度補正予算案、25年度予算案を厳しく問わなければならない。
軍事は「多数与党」
石破首相は所信表明で、「他党にも丁寧に意見を聞き」と語り、安倍政権から続く「自民1強」態勢との違いを見せた。だが、それは国民民主党の予算審議への協力を取り付けるための駆け引きに過ぎない。
「103万円の壁」は問題になっても、毎年史上最高額を更新し続ける軍事費については、政党間では何の議論も起こらない。維新、国民民主などは軍事増強を支持する「与党」だからだ。
「5年間で倍増」を目標に引き上げられる軍事費は、毎年1兆円以上が積みあがっている。22年度の5・4兆円(当初)は24年度で7・9兆円になった。27年度には10・8兆円をめざしている。国家予算全体がこのテンポで拡大することはあり得ない。つまり、国家予算にしめる軍事費の割合が確実に増していくということだ。
何を重点に政治を行っているのかは、税金の使い方を見ればわかる。国家予算に占める軍事費の割合(24年度)を他国と比較すると、世界一の軍事大国米国は13・1%、「軍事的脅威」とする中国は5・8%。日本は7・0%だ。27年には10%近くになる可能性が高い。中国以上に「軍事的脅威」を与える軍事優先国家になってしまうのだ。
日本の国家予算の内訳を見れば、すでに軍事費は教育費の2倍に達している。このまま拡大すれば社会保障費など他の支出を圧迫していくことは明らかだ。
普天間もリニューアル
臨時国会で議論される24年度補正予算案をみよう。総額13・9兆円のうち防衛省分が8268億円を占める。補正予算額として過去最高額だ。沿岸警備にあたる海上保安庁912億円を加えれば、軍事費は9000億円以上の上積みになる。
内訳をみると、大半が兵器の追加購入と基地整備の追加費用だ。いわば当初予算額を抑えるために、補正予算に回した細工だと言える。
たとえば、「自衛隊の運用態勢の早期確保」3369億円。海上自衛隊「哨戒ヘリコプター(SH―60L)」と「多機能ステルス護衛艦(FFM)」の1863億円は当初の追加発注分だ。陸上自衛隊では「12式地対艦誘導弾」などのミサイルの追加購入分398億円が計上されている。三菱重工など受注会社は、年度当初から追加分を含めた製造工程を組んでいるに違いない。
また、「米軍再編の着実な実施」として計上された3307億円も問題は多い。鹿児島県の馬毛島における係留施設、滑走路整備費などとして1377億円。辺野古新基地建設費826億円、他に普天間飛行場補修事業9億円。
馬毛島の基地建設費は当初予算302億円だった。島を丸ごと基地にする工事は既に島全体を裸地に変えている。米軍空母艦載機の離着陸訓練(タッチアンドゴー)の早期使用に向けた追加予算だが、現地では労働者の確保など飽和状態になっている。
辺野古新基地は当初の1600億円が1・5倍になる。しかし、軟弱地盤の再調査を行うなど、設計見直しは必至だ。発注しても工事ができる状況にはない。
すぐにでも閉鎖すべき普天間飛行場に、13年から23年までに217億円の補修費をつぎ込んでいる。米軍の要請に応え、格納庫や隊舎など18施設のリニューアルを行っている。24年度当初予算には13億円。補正予算とあわせれば、24年度までの12年間で239億円が普天間基地延命に使われることになる。まだ6施設の「補修」工事が残っている。
石破は所信表明演説の中で「普天間飛行場の一日も早い返還を実現するため、辺野古移設が唯一の解決策であるとの方針に基づき、着実に工事を進める」と述べた。「加えて、在日米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進める」と持論を表明した。
普天間は米軍が使い続け、辺野古が仮に完成すれば、もっぱら自衛隊が使う構想はますます現実味を増してきた。
所得税で軍拡狙う
湯水のように注ぎ込まれる軍事費。その財源について、22年末岸田政権が決めた方針は、決算剰余金などの他1兆円は「増税」によるとし、その実施時期だけが先送りにされてきた。
あてにされているのは3つの税。法人税には、主に大企業を対象に4・0〜4・5%を付加し、所得税には1%を上乗せする。その代わり東日本災害のための復興特別所得税の税率を1%引き下げ、課税期間を延長し総額を変えないようにする。他に、たばこ1本あたり3円相当の税を段階的に課すことにしている。
だが、24年の税制調査会は、「103万円の壁」問題に話題が集中し、軍拡増税についてはほとんど議論が起きていない。昨年、岸田は24年度の実施を見送った。自民党内から反対の声が出ていたからだ。
石破は選挙前「(年末の)税制改正論議で決着をつけなければならない」と語っていた。だが「軍事費倍増」に賛成する維新、国民民主さえ、増税には反対の姿勢を示している。自公で押し切ることはできない。
しかし、たとえ増税案が先送りされたとしても、国家予算の10%を軍事費につぎ込む戦争国家が転換されるわけではない。1円といえども、憲法に反する軍隊のために支出させてはならない。平和を破壊する軍事費の大幅削減が、税の使い方をただす大きな一歩になる。
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石破は所信表明で「米国には米国の国益があり、日本には日本の国益がある」と言った。文脈からすれば、米軍駐留経費の負担増を求めるトランプ次期大統領を意識した牽制(けんせい)球ととれる。だが石破の言う「日本の国益」は米国の要求を飲まないことではない。「日米同盟のさらなる高みへの引き上げ」で結んでいる。結局、「米軍と対等の日本軍」、これが言いたかったのだ。
石破の「国益」は労働者・市民の利益とは全く無縁のものだ。沖縄をはじめとした軍事基地強化反対の声を踏みにじるものでしかない。軍事費支出をやめよ。平和外交に徹し、自衛隊を解体せよ。これが憲法にかなった労働者・市民の最大の利益なのである。
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