2024年12月13日 1850号

【日本が原発をやめない理由 狙いは独自核武装 石破首相の危険な野望】

 石破茂首相は政界でも有数の核武装論者だ。一貫して「非核三原則の見直し」を口にし、首相就任後は控えてはいるものの、直近でも「核共有」「核持ち込み」に公然と言及した。

 日本では、長らく「核武装の話はタブー」とされてきたが、すでにそれが実現可能な技術的条件は整っている。日本が米ロに次ぐ世界3位の核保有国になる―絵空事だと思うかもしれない。だが首相と政権の決断がなされれば、5年程度で実現可能なシナリオなのだ。

溜まるプルトニウム

 現在、日本には原発から出たプルトニウムが溜まり続けており、その量は46dに達する。

 背景には核燃料サイクルの行き詰まりがある。プルトニウムを燃料にする計画だった高速増殖炉「もんじゅ」はトラブルが頻発し廃炉となった。青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設は完成が27回も延期され稼働のめどは立たない。各地の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を燃やすプルサーマルが行われている。プルトニウム保有に対する国際的批判をかわす狙いだが、実際の消費量は微々たるものだ。

石破、外務省の野望

 IAEA(国際原子力機関)は、純度の高い兵器級か、純度の低い原子炉級かを問わず、プルトニウム8`cで1発の核兵器が作れるとする。プルトニウムを使用した核兵器と言えば、すぐに思いつくのは長崎原爆だ。過去にはインドが「平和利用」目的の原発技術から核兵器製造に成功し世界に衝撃を与えた。

 日本のプルトニウム保有量から換算すると核兵器約5700発分に相当する。現在、5000発を超える核兵器を保有しているのは米ロ両国だけ。日本は、核兵器保有数世界第3位となれるだけのプルトニウムをすでに保有しているのだ。






 日本で核兵器の製造はどれくらいあればできるのか。製造だけなら3か月程度で可能とする技術者は多い。日本が保有するプルトニウムの多くは、再処理委託先であるフランスなど海外にある。直ちに製造に着手できるわけではないものの、日本への輸送などを考慮しても、数十発の核兵器を持つ程度であれば5年で十分可能なシナリオだ。

 「核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともにこれに対する掣肘(せいちゅう)(干渉や行動制約)をうけないよう配慮する」。1969年の外務省内部文書「わが国の外交政策大綱」にそんな記述がある。

 石破は「米国の核の傘で守ってもらいながら『持たず、つくらず、持ち込ませず、議論もせず』でいいのか。『持ち込み』から共同保有まであらゆる議論が必要だ」との論考を発表している(『中央公論』2017年11月号)。9月の総裁選投票直前にも、米ハドソン研究所への寄稿に「米国の核シェア(共有)や核の持ち込みも具体的に検討せねばならない」と明記した。

 これらは、核兵器禁止条約加盟を拒否し続ける国家意思と符合する。

 「戦後79年たっても被爆への補償が十分されず、戦後処理は終わっていないのに核共有なんてもってのほかだ」。今年、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中重光代表委員の批判は当然だ。


敵基地攻撃能力と一体

 安倍政権以降、自衛隊基地強化やミサイル基地整備が、沖縄など琉球弧のみならず全国で急激に進む。ミサイル基地は日本を防衛するものではなく敵基地攻撃能力保有のためのものだ。

 溜め込んだプルトニウムを使って最短で3か月、長くかかっても数年で数十発の核弾頭製造能力を持つ日本が、ロケット=ミサイル技術と組み合わせていつでも中距離核ミサイルを保有できる条件は整っている。あとは首相が決断し政権が動くだけ―人類滅亡への引き金を日本が引きかねないほど事態は切迫している。

 核燃料サイクルの失敗も、核保有維持し続けることをもくろむ戦争推進勢力にはかえって好都合≠ニなる。

 原発推進と軍事力強化は一体で進められている。こうした流れを運動の力で止めなければならない。

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