2024年12月13日 1850号

【読書室/崩壊する日本の公教育/鈴木大裕著 集英社新書 1000円(税込1100円)/新自由主義教育にあらがう】

 公教育を破壊する新自由主義教育は、アメリカで先行し、日本がその後を追っている。本書の著者、鈴木大裕はそう指摘する。

 第1章で紹介される「とある小学校」では、結果がすべて。常に生徒をテストし、数値化されたデータを管理職が管理し、教員の評価・指導を行う。授業は学力テスト対策が中心。生徒は話を聞く時の手の位置、挙手の角度、うなずき方まで決められ、少しでも規律を守らない子には厳罰が下される。ニューヨーク市のハーレムにある大手の公設民営学校(チャータースクール)の姿だ。

 こうした潮流は日本にも現れている。全国学力・学習状況調査(学テ)の導入以降、全国順位争いが学校教育をゆがめてきた。とりわけ維新支配下の大阪では、学校選択制や成績での学校ランク付け、教員の成果主義など、首長主導の「改革」が行われてきた。

 著者は、本来の公教育では、テストの点数という「結果」ではなく、どのような教育を行うかの「過程」が重視されるべきだと指摘する。教科の学習だけでなく、学級活動や学校行事、日々の学校生活を通じて生徒に寄り添い、生徒の人間としての成長を共に育んでいくことこそ教員の役割であるはずなのだ。

 新自由主義教育は一つの教育政策ではひっくり返せない。教育を通した社会運動を通じて人びとの意識を少しでも変える。著者の批判は資本主義そのものに向かう。社会の中に、人間らしく生きるための「遊び」、「モノ・カネ」だけの価値観にからめとられない「すきま」を作り、連帯と運動でその民主的空間を広げていく。それが新自由主義にあらがう道だ。  (N)
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