2024年12月13日 1850号

【「台湾有事」を起こさせない/軍事化止め 対話で平和を/全国9都市でスピーキングツアー】

 11月23日〜12月1日全国9都市で、沖縄など琉球弧から闘いを発信したZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)スピーキングツアー集会には、オンラインを含め900人が参加。ガザ虐殺が1年以上、ウクライナ戦争が2年以上続き、全国で軍事化が進む中、“国際連帯で即時停戦!戦争止め対話で平和をつくろう”はすべての市民の願いだ。最終日の大阪市をはじめ神奈川、京都、大阪狭山市(6面)、広島(同)の各集会を紹介する(滋賀、兵庫集会は次号)。

戦争準備に抗する奄美大島の闘いに連帯/大阪市集会

 12月1日、大阪市集会では、SNSもあわせ150人が前奄美市議・関誠之(まさゆき)さんから奄美大島で進む軍事化の実相と闘いを聴いた。

 講演に続く第2部。「月桃の花」歌舞団が新作テーマソング『私の声 あなたの声』の合唱を披露し、ユース団員(中学1年)は自らの生きづらさを歌舞団で乗り越えてきた体験からの思いを込め、来年3月29日(土)大阪市大正区公演への参加、協力を呼びかけた。

 関さんら奄美大島の闘いに、軍事化を止めていく大阪の取り組みで応える。

 イスラエル協力企業への首都圏抗議行動参加者は継続して取り組む決意を表明。「平和と民主主義をめざす会・大阪」メンバーは会の通信を戸別訪問で届ける中で、「平和で豊かな枚方(ひらかた)を市民みんなでつくる会」は週刊MDSを読む会や写真展を通じて、軍事化に反対する市民の思いをつなげてきた実践を報告した。

 憲法いかそう茨木市民の会代表・山本よし子茨木市議は「開発優先の茨木市政や維新大阪府政と対峙してきた。奄美大島の軍事化問題も地元の総がかり行動に持ち込み、一緒に取り組んでいきます」と述べ、1月市議選勝利を訴える。

 田中拓真ZENKO共同代表による「地域から戦争反対の声をあげ続けていこう」とのまとめをうけ、大阪市内のデモ。「人殺しの戦争を今すぐ止めよう」のコールを響かせた。


島の暮らしを翻弄する馬毛島基地建設/和田香織里さん(馬毛島基地反対住民訴訟原告団長)/神奈川集会

 11月25日神奈川集会のゲストは、鹿児島県西之表市種子島在住で馬毛島(まげしま)基地反対住民訴訟原告団長の和田香穂里さん。「戦争はどんな正義をかざそうと人殺しに他ならない。戦争に直結する基地も武器もなくしたい」と前置きし、自衛隊馬毛島基地建設で進む経済・暮らし・環境破壊の現状を告発した。

 マゲシカなど希少な動植物が生息する自然豊かな馬毛島。だが、自衛隊の訓練・後方支援拠点、FCLP(米軍空母艦載機離着陸訓練)の移転先とする巨大基地の建設により、生態系は壊滅の危機に瀕している。

 種子島・馬毛島合わせて4850人(10月末時点)もの工事関係者が全国から押し寄せ、宿泊施設は常に満室。交通量の激増、島内移動の圧迫、医療機関の混雑、人手不足の深刻化、家賃の高騰等々、住民生活は大混乱に直面している。20億円を超える再編交付金で「行政バブル」が膨らむ一方、農林漁業従事者が馬毛島関連に引き抜かれ、地場産業は疲弊しつつある。

 和田さんらは昨年12月、西之表市長を相手取り、土地売却・市道廃止処分の違法性を追及する「どんたち(わたしたち)の馬毛島を返してや」馬毛島基地反対住民訴訟を提訴した。「緑の島を子や孫の世代に残したい。そのために、やれることは何でもやる。様々な形で声を上げ続け、こぶしを上げ続けていく。全国の仲間とつながっていく。主権者としての当然の権利行使を決して手放さない」。和田さんの決意は大きな拍手で受けとめられた。

 集会では、同訴訟弁護団事務局長の塚本和也さんから、裁判支援とともに来年1月26日に告示される西之表市長選・市議選での基地反対派勝利に向けた支援の呼びかけがあった。




武力で平和はつくれない/関誠之さん(前・奄美市議/奄美ブロック護憲平和フォーラム代表)

 2014年、防衛省からの自衛隊配備の要請を受けて市長が歓迎の意向を示し、議会でも可決。多額の予算もつき、基地の建設・拡張が進められていった。

 住民とともに反対運動に取り組み、新聞社にお願いして賛成派の自民党市議と対談もした。対談の場で賛成派は、抑止力が安心・安全につながると主張。これに対して、他国との緊張、偶発的な武力衝突の可能性を高め、攻撃の標的となる。今や奄美は国防の最前線、住民は不安に感じている。基地は戦争に備えてつくられるものであり、平和のためではない。その歴史認識を共有していかなければならない、と指摘した。

 2019年3月、世界自然遺産に登録されている奄美大島に、警備部隊・ミサイル部隊が開設された。

 駐屯地で訓練はするが市街地ではやらないと言ったにもかかわらず、住民への告知もなしに漁港で水路侵入訓練を行った上、小銃を持って通学路を行進した。これらの風景が当たり前になってきている。また、告知・説明なしに「オリエント・シールド」など日米合同の大規模訓練がたびたび実施されている。

 米国の捨て石としての南西諸島の軍事拠点化だ。


無理が無理を生み想定どおり進まぬ辺野古/京都集会 北上田毅さん(沖縄平和市民連絡会)がアピール

 京都集会は26日、「沖縄平和市民連絡会」の北上田毅さんをメインスピーカーとして会場に迎え開催された。土木技術者の観点から辺野古新基地建設の現況と問題点を解説した。

 8月20日から大浦湾では海底への杭打ち工事が始まっている。しかし、新基地建設が抱える問題は軟弱地盤以外にも多岐にわたる。まず、海に投入される土砂に粘土質に近いものが混じっており、石材も未洗浄であるために当初の想定よりも激しい海洋汚濁を起こしている。工事条件の「事前協議」違反であるため沖縄県から防衛局への行政指導が行われているが、無視され続けている。

 また、設計変更や再調査のための遅れを取り戻そうと、もともとは使う予定のなかったウォータージェットによる鋼管矢板打設工法を使用するようになったが、これも深刻な海洋汚濁につながる。無理なやり方がさらなる無理を生んでいる。

 地盤改良工事に防衛局が想定する9年3か月以上かかることは既に確定的で、米軍側も戦略的な観点から辺野古に対して消極的になっている。「工事に携わる大手ゼネコンと警備会社だけが得をしている状況だ」と北上田さんは指摘する。

 6月の名護市安和(あわ)桟橋での死傷事故以降、基地推進派から罵詈雑言(ばりぞうごん)を含む中傷が強まっていることにも触れ、「事故の原因は工事を急がせる防衛局にあり、抗議行動を変わらぬ決意で続けていく」と語った。世界自然遺産である奄美大島からの土砂調達反対の全国署名も呼びかけた。

 会場からは北上田さんへの激励、経ヶ岬米軍Xバンドレーダー基地への抗議行動の報告や、祝園(ほうその)弾薬庫建設の説明会開催を求める署名協力の訴えもあった。



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