2024年12月20日 1851号
【未来への責任(410) 日本政府の「解決策」は失敗した】
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「徴用工」問題は、2018年の韓国大法院判決で強制動員被害者への賠償を命じられた日本製鉄と三菱重工の債務を韓国の財団が肩代わり(第三者弁済)する解決策に、日韓両政府が昨年3月に合意することで政治決着が図られた。その後、企業の謝罪も賠償もない解決案は受け入れないとしていた4名の原告のうち、相次いでふたりの生存原告が第三者弁済を受け入れた(今年10月)。
その直後になるが、11月30日にオンライン講座「強制動員・韓国大法院判決その後―現状と課題―」(主催ー強制動員真相究明ネットワーク)が開催され私も参加した。
主な発言を紹介する。
韓国の強制動員訴訟を中心的に担ってきた林宰成(イムジェソン)弁護士は「2012年に大法院が強制動員被害者の損害賠償請求権を認めて以降、提訴した裁判は昨年末から今年にかけて2018年判決を踏襲する大法院判決が下された。18年判決以降に提訴した55件の裁判はDOWAホールディングス、JX金属、日本コークス、三菱マテリアル、西松建設、安藤ハザマ、住友金属鉱山、住石ホールディングスなど被告企業が増加した。また、時効の起算点は18年の判決時であるという判断が大法院から示されたのでこれからも下級審での勝訴判決は続く。財団は第三者弁済の受け取りを拒否した原告らの債務を消滅させるために8つの地裁に供託を行ったが、すべての地裁で第三者弁済は損害賠償制度の根幹を揺るがし『加害企業が免罪符を得る』もので無効であるとの判断が示された。そして日本からの拠出がなかったため財源が枯渇した財団は、昨年末から今年にかけて出された判決で第三者弁済案を受け入れた原告への『弁済』もできなくなった。さらに三菱重工の韓国の『孫会社』が持っていた債権を差し押えていたが、その取り立てを求めていた裁判の判決が来年早々出される。第三者弁済案の目的であった大法院判決を無効化し日本企業を免罪することは失敗に終わった」と裁判の現状を報告した。
韓国民族問題研究所の対外協力室長の金英丸(キムヨンファン)さんは「2018年判決は植民地主義の克服を掲げた2001年のダーバン宣言を踏まえた1965年(日韓条約)体制を乗り越えた画期的判決だった。しかし尹錫悦(ユンソンニョル)政権は第三者弁済案を被害者に突き付け長きにわたり闘ってきた被害者に不当な選択を迫り人権問題を債権問題にすり替えた。18年以降の裁判での被告企業数の増加は、この問題が個別企業では解決できない日本社会全体で受け止めなければならないことを明らかにした」と日本政府・企業が動かない限り問題は終わらないことを明快に指摘した。
戦後80年、日韓条約締結60年を目前に控えた今、私たち自身あらためて強制動員問題に向き合わなければならない。
(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)
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