2024年12月20日 1851号
【みるよむ(716)2024年12月7配信/イラクで増加する医療ミス】
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イラクでは、医療現場でミスが頻発し、患者の健康と命に関わる深刻な事故が発生している。その社会背景は何だろうか。2024年10月、サナテレビはこの問題について報道した。
映像でも、ある病院の医療ミスで患者が死亡した痛ましい事例が示される。ミスの態様はさまざまだ。薬の不適切な調剤や二重投与といったものもある。間違った診断をしたために不適切な投薬を行うこともある。
医師が診断を誤る原因は「過失、訓練不足、材料不足などである」と映像は報告する。さらに、手術器具を患者の体内に残したり、間違った臓器の手術が行われることもある。
サナテレビによると、イラクでは美容整形部門の医療ミスの割合が高いという。その背景にはバグダッドなどの大都市で美容整形手術の利用が大幅に増加していることがある。手術のミスで「永久に顔の形状が崩れてしまったり、死に至ることさえある」といった深刻な被害が起こっている。
どうしてこんなひどい事例が多発するのだろうか。サナテレビは「医療部門の組織が全く不備で無免許の美容センターが違反を行っている」という実態を指摘している。
そして「保健省が、美容整形センターの監督を強化し、医療スタッフを効果的に訓練し、安全で質の高いサービスを提供できるよう、対策を強化すること、さらに信頼できるクリニックを利用するように啓発すること」を提言している。
背景に公的医療の解体
日本や米国で、公的医療が削減され営利主義が広がっているように、イラクでも2003年の占領以後、公的医療が解体されてきた。営利優先の医療が横行し、政府は監督と市民の健康の保障の責任を放棄している。サナテレビは、市民がまともな医療を政府に要求し公的な医療再建の闘いを進めようと呼びかけている。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)
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