2024年12月27日 1852号
【ミリタリー/ICCがネタニヤフに逮捕状/妨害許さぬ正義実現は世界市民の運動の力で】
|
11月21日、国際刑事裁判所(ICC)は、「最も重大な」戦争犯罪の疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相、ガラント前国防相、ハマスのムハンマド・デイフ軍事部門トップに対する逮捕状を発付した。5月20日、ICC検察局(英国のカリム・カーン主任検察官)が逮捕状を請求してほぼ6か月後の発付である。
すでに、5月の逮捕状請求時に、イスラエル、米国などからICCに対して尋常ではない非難と脅迫まがいの圧力が加えられてきたが、一層激しい攻撃を受けることも覚悟した強い決意の逮捕状発付であった。米国はこれまでにICCの主任検察官らを制裁対象に指定し、ビザ発給を停止する措置を実際に取ったこともある。これらの理不尽な攻撃に対し、「国連安全保障理事会の常任理事国から、(ICCが)テロ組織であるかのように脅迫されている」(ICC赤根智子所長)と強く抗議してきた。
ICCは「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」(戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、侵略犯罪の4つ)を犯した者の「不処罰」を終わらせるとの目標を掲げて出発した(2002年オランダ・ハーグに設置。国連加盟国193のうち123の加盟)。
だが、今日に至るまで、米国など大国の非協力(米国、イスラエル、中国、ロシアなどは未加盟)と妨害で、目標に近づけない現状にある。なぜ締約国に加わることを拒絶するのか。
最大の理由は実際に戦争の当事者であり、戦争準備を行っているからだ。今日の戦争で、国際法に規定された戦争犯罪を伴わない戦争などない。ウクライナ戦争でも、ロシアの侵略はもとより、捕虜の処刑などの戦争犯罪がロシア、ウクライナ双方で起きている。
ICCは、すべての事態に対応できない困難の中で、どの事態を優先するかを検討し、被害者の中でも最も弱い立場に置かれた「子どもと女性」の保護を優先することを決めた。プーチンらに対する逮捕状の容疑がウクライナの占領地から子どもたちを強制移送した戦争犯罪であったこと、子どもと女性の犠牲が膨大な数に上っているガザを含むパレスチナの事態で逮捕状が発布されたことは、この取り組みの結果といえる。
ICC設立以来、ロシアやイスラエルという、安保理常任理事国や、米国などが全面的に支持する国の要人に逮捕状が発布されたのは初めてである。一歩踏み込んだことの意義は大きい。ICCの活動の発展が、平和な世界へ向かう道であることは明らかだ。今、このICCの国際正義の追求を支え、正義が実現されるには世界の市民の声と運動が不可欠である。
豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
 |
|