2024年12月27日 1852号

【私たちのまちにタワマンはいらない/まちの魅力を残す修復型のまちづくりを/暴走する再開発に警鐘/東京・北区】

 現在、赤羽駅東口の3つの地区で北区と不動産ディベロッパーが中心となり、「まちづくり」を名目に再開発が進められている。

 第一地区は2024年1月、市街地再開発組合の設立が認可され、高さ108bのタワーマンションが建設されることが決定。総事業費238億円のうち75億円が税金(交付金)だ。再開発の調査設計・土地整備・共同施設整備などにかかる費用の3分の2を国と自治体が補助する。22年には資材価格高騰に対して「防災・省エネまちづくり緊急促進事業(地域活性化タイプ)」と呼ばれる国の支援制度ができ、資材価格の一部がさらに追加で助成されることになった。

 不動産ディベロッパーにとっては、75億円の交付金に加え、高度利用地区として容積率を今の600%から800%に増やせるという“おいしい”タワマン建設だが、景観を壊し、環境被害を増やし、地震や水害時には機能マヒし、半世紀後には廃墟と化すような代物に税金を使うことなど到底許せない。

 残りの2地区でも、北区はタワマンと隣接する赤羽小学校を地区外に移転させるかタワマンに「合築」しようと計画し始めている。再開発を許せば、「せんべろ=千円でべろべろに酔える」の聖地として名を馳せるOK横丁や一番街の飲食店街が撤退に追い込まれ、移転となれば移転先の赤羽公園が公園でなくなる可能性もでてくる。

署名2983筆の力

 このような計画に異議をとなえ、「住民本位の赤羽まちづくりを進める会」と「やさしいまちをつくる会きたく」は昨年、2983筆の署名を集めて北区に提出。昨年9月の赤羽駅東口地区まちづくり全体協議会総会には多くの住民が参加し、赤羽小移転を容認する「まちづくり提案(案)」に反対意見を表明した。採決の結果、移転容認案は否決となった。

 今年5月の第5回赤羽駅周辺地区まちづくり基本計画策定検討会でも、北区の意図が明らかになると「学校とマンションを一体化するのはいかがなものか」「十条駅前にできた39階建てマンションは異常な光景」「景観や文化、歴史の観点での評価も必要ではないか」「商店街は赤羽の顔であり、もっと評価してもよいのでは」などの意見が噴出。最後には検討会会長から「このまま進めるわけにはいかない。仕切り直しをする」との表明があった。

 北区は作戦を変え、その後の検討会ではこれまでの計画図面に基づく議論は行わず、検討会の目的を「大きな姿(将来像)」を示すこととし、具体的なことは現在の検討会ではなく次年度以降に別の体制で全て決めると表明。11月の第8回検討会で北区は、東口一帯を「大くくり化」した再開発がより「効率的」と提案してきた。赤羽小を赤羽会館・赤羽公園に移転させ、学校跡地を再開発の中に組み込むことを狙ったものだ。会長は「これまで一度も議論してこなかった。ここで決めてよいものか」「私の住んでいる中野のサンプラザの例もあり、高層化もなかなかうまくいってない」「修復型などいろいろなやり方がある」と異論を差しはさむことに。

一人ひとりの声を集め

 北区がまちづくり全体協議会を休会とする中、ならばと私たちは住民懇談会を開催。5月には50名、9月には65名が参加し、一人ひとりの意見を集約した。せんべろ横丁でもアンケートを実施。北区が検討会や区報でタワマンという言葉を一切使わず、再開発の狙いを隠しているのに対し、イメージ写真などを使って「タワーマンション誘致の市街地再開発ではなく、学校・商店街・公園など、まちの魅力を残す修復型の赤羽まちづくりの推進を求める要請署名」を10月から開始した。

 署名は短期間に1025筆が集中。その結果や寄せられた意見、要望書を検討会委員にも郵送した。多くの声と運動が、暴走する再開発に強く警鐘を鳴らしだしている。

(東京 やさしいまちをつくる会きたく 辻俊介)

 

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