2025年01月17日 1854号
【石破政権 25年度予算案/社会保障関係費を圧迫する軍事費/敵基地攻撃 宇宙軍の創設へ】
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2025年度予算案が閣議決定された。石破政権の政策はこれまでの自公政権の延長である。「年収103万円の壁」の陰に隠れ、軍事増税(法人税・たばこ税)の実施時期を決めた。歳出では軍事費が急増し、社会保障費を圧迫している。軍事緊張をあおる軍事費の削減が、いつにもまして重要だ。通常国会は、少数与党政権に政策転換を迫る絶好の機会だ。
「石破カラー」
政府は昨年12月27日、総額115兆5415億円にのぼる25予算案を閣議決定した。昨年度当初予算に比べ約3兆円の増額になっている。国債の新規発行を前年度から6・8兆円減らしながら増額できたのは税収の伸びが大きい。税収見込み約78・4兆円は昨年度に比べ8・8兆円の増である。10%以上もの増収を計上するのは、円安による輸出産業の「好調」などをあてにしていることによる。
歳入の「余裕」を石破政権はどう使うのか。
予算編成作業は毎年6月に決定される「骨太方針」(経済財政運営と改革の基本方針)をもとにした各省庁の概算要求が8月末、財務省に提出され、財務省は各省庁との調整をはかり政府案をまとめている。
24年はこの時期に、総裁選(9月)、衆院選(10月)が実施され、政権がどうなるか不透明になったが、骨格は岸田政権下でできていた。石破カラーがあるにしても最後の飾りつけ程度だ。
たとえば、所得税徴収の対象となる「年収103万円の壁」は「123万円」に修正したが、これに要する財源は7千億〜8千億円程度だ。
石破政権の看板「地方創生2・0」。地方自治体への交付金は1・3兆円増えているが、税収の増加が反映したものに過ぎない。「倍増した」という地方創生関連予算は1000億円を上積みした程度だ。だが、「地方創生推進交付金」は過疎化や高齢化などの課題解決に効果をあげていない。16年のスタート以来、これまで一度も活用していない自治体は227にのぼる。「職員不足で計画書作成に手が回らない」(12/27北海道新聞)と報じられている。自治体は、政府が進めた公務員定数削減攻撃により、疲弊しきっている。ここを放置して「地方創生」はない。
低軌道の軍事衛星群
歳出総額から国債の返済分を除いた政策的経費。この中で、伸び率が突出しているのが軍事費だ。昨年度当初の0・8兆円増、率にして9%を超える8・7兆円を計上。5年間で43・5兆円(契約額ベース)の整備計画は中間点となる25年度で62%を発注することになる。
防衛省が力点を置いたのが敵基地攻撃能力に不可欠な「衛星コンステレーションの構築」である。長距離ミサイルを目標に正確に誘導するには通信衛星の存在が欠かせない。それも「星座(コンステレーション)」のように多数の衛星を打ち上げるというのである。このシステムの構築、運営を軍需産業と一体で行うというのだ。今年度2832億円でスタートする。
このモデルとなっているのは、「スターリンク」だ。スターリンクは、米資本家イーロン・マスクが設立したスペースX社が提供する衛星通信システム。すでに5000機以上の低軌道衛星を備えている。その威力を見せつけたのが、ウクライナ戦争だった。ロシアがサイバー攻撃で破壊したウクライナの通信網の代替システムとして提供。ロシア軍への反撃に威力を示した。
高速ミサイルを捕捉、誘導するにも、通信時間の遅延が少ない低軌道衛星群によるシステムが有効とされる。日本政府は、20年の「宇宙基本計画」で「相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力」に言及し、宇宙でも敵基地攻撃能力を手にすることをうたっている。23年6月には、「宇宙安全保障構想」を公表した。
今後、宇宙領域での軍事化が加速する。防衛省はそれに対応した組織拡充をはかる。25年度には「宇宙作戦団(仮称)」が新編成され、将来的に「航空宇宙自衛隊」の実行部隊を組織するつもりだ。当然、サイバー、電磁波攻撃を想定する「宇宙領域における能力強化」の任務もあり、5千億円以上の予算をつけた。
突出する伸び率
軍事費がどれほど社会保障費を圧倒しているのか、もう一度政府の歳出構造を見ておこう。政策的経費のうち地方交付税交付金を除いた一般支出額68・2兆円が政府の政策を裏付ける財源となる。そのうち56・2%をしめる社会保障関連費の内訳は、年金13・7兆円、医療12・3兆円。生活保護など4・5兆円、介護3・7兆円などだ。軍事費8・7兆円は年金、医療に次ぐ予算規模になる。特に、前年度からの伸び率は軍事費9・4%に比べ、年金、医療は2%前後の低さに抑え込んでいる。
政府はどんな方針で臨んだか。財務省が作成した「社会保障関係費の予算のポイント」(24年12月)には、「実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針に沿った姿を実現した」と誇らしげに書いている。「自然増は6500億円程度、制度改革・効率化等は1300億円程度の削減、社会保障の充実等は300億円程度」。いかに社会保障関連費を抑え込むかに力を注いでいることが分かる。
独自の軍事衛星を「星座」のように打ち上げ、長距離ミサイルを開発、配備する。琉球弧の島々で基地建設を強行し、全国12施設で57棟の弾薬庫を新設、司令部を地下化する。命を守る社会保障関連費の厳しい査定に比べ、人殺しのための軍事費には好き放題に予算付けをする自公政権。これ以上許すわけにはいかない。
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予算案とともに税制改正大綱が閣議決定され、「防衛特別法人税」の実施を決めた(たばこ税の増税も)。軍事費の財源と明記する税とは、戦争準備の目的以外に流用できない税である。戦争目的税が戦後初めて創設されることになる。
防衛特別法人税は、26年4月1日以降、基準法人税額から500万円を控除した額の4%を当てる。対象となるのは、大企業がほとんどだと言われている。グローバル資本が戦争準備に税負担するのは自分のためであり、ある意味分かりやすい構図だが(喫煙者が戦費負担する理屈はない)、ひとたび戦争目的税が創設されれば課税対象は全市民に拡がっていく。既に所得への課税は既定方針になっている。
マスコミは、「年収123万円」や「高校授業料無償化」などが与野党の攻防点で、少数与党では3月末までに予算が成立しない場合もあるとの予測を流している。だがより根本的な争点を見落としてはならない。戦争目的税をやめろ。軍事費を削って、教育、福祉に回せ。戦争国家づくりからの政策転換が求められているのだ。 |
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