2025年01月17日 1854号

【DSAニックのアメリカレポート(第10回)/大統領選後にDSA激増/強力な社会主義政治組織へ】

 ドナルド・トランプが大統領に再び当選したことを契機に、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)各支部の会員数は大幅に増加した。私が運営委員会の一員として活動しているスノホミッシュ郡支部もそうだ。私たちの支部がこの増加にどう備え対応してきたか、数か月の状況をまとめた。

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 筆者のニック・ワトキンスさんは、全米最大の社会主義団体DSAのメンバー。現在、米国北西部ワシントン州スノホミッシュ郡支部で運営委員会の中心メンバーとして活動している。
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 11月の選挙に先立ち、私たちの支部は2つの大きな問題に焦点を当てていた。

 エバレット市の最低賃金引き上げに向けた住民投票運動を支援(1831号3面参照)と、この地域最大の雇用主の1つであるボーイングで働く3万3千人以上の労働者による2か月間のストライキ支援だ。

 9月中旬、支部の運営委員会は、選挙後の数週間に備える方法について話し合った。近年、アメリカ政治での大きな出来事は、政治的に活動していなかったアメリカ人を活性化させている(例えば、2016年のトランプ勝利、2020年のバーニー・サンダースの立候補、同年夏のジョージ・フロイドの殺害後の運動、2023年のガザへ攻撃激化後など)。そのため、選挙の結果に関係なく、資本主義体制への怒りを向ける方法を探している新しいメンバーを迎える準備を整えたいと考えていた。

 私たちは、選挙日の翌土曜日に支部の交流イベントを予定し、それを最低賃金キャンペーンの打ち上げとともに、大統領選挙の結果がどうあれ残念な選挙結果を悼(いた)む場として宣伝することにした。また、2025年の支部目標について話し合うために、翌週末には支部全体会議も予定した。

住民投票勝利を祝う

 11月5日、最低賃金住民投票の最初の結果を見て、支部のメンバーはネット上で祝った(私たちの支部はネット掲示板サービスDiscordを活用している)。私たちが圧倒的に勝利したことは明らかだった(最終結果は59・09%が賛成)。同時に、大統領選のニュースも入ってきた。トランプが再び大統領になることが確実となり、未来への不確実性と恐怖の雰囲気もあった。

 しかし、私たちの計画は報われた。選挙後の交流イベントには約40人が参加し、そのうち15人がDSAのイベントには初参加だった。交流イベントでは、翌週の支部会議を宣伝し、メンバーに最低賃金キャンペーンの成功について演説を行ってもらった。より積極的なメンバーには、初参加者を見つけて話しかけるよう奨励した。登録テーブルを設け、出席者全員の連絡先を集めた。

市民の活性化に展望

 翌週末、支部会議を行った。私たちの支部は小さく、通常の支部会議には約15〜25人が参加する。今回の会議には25〜40人の参加者を予想していた。

 会議の時間が近づくにつれて、参加者の数が予想を上まることは明らかだった。最終的には、約60人が出席(ほぼ全員が直接出席、約10人はオンライン参加)。新しい参加者があまりにも多く、追加の椅子を探すのに苦労した。すでに活動しているメンバーに、最低賃金キャンペーンや地元労働者を支援する取り組みについて話してもらい、その後、全員で2025年のキャンペーンの提案や組織体制の構築について話し合った。

 いつもより大規模な会議を運営するのは大変だったが、トランプの勝利後にどれだけ多くの人が活動的になったかを見て、刺激を受け、やる気が沸いた。そして、最低賃金キャンペーンの勝利は、私たちが地域に変化をもたらし、長期的には地域と国の権力を争う組織を築くことができる例として、自信を持って指摘できると感じた。

新メンバーとともに

 選挙後の2か月で、支部員は様々な会議やイベントを主催し、交流会を企画し、クリスマス休暇を前にストライキ中のスターバックス従業員への支援を主導した。

 トランプの当選は、新しいメンバーの参加を促しただけでなく、すでに活動しているメンバーをも興奮させている。

 選挙後、私たちは新メンバー向けの「DSA101(新会員説明会)」を2回開催し、合計35人以上が参加した。支部の政治教育委員会は、すぐに「資本主義とは何か?」と題した教育イベントを企画し、主に新メンバーである17人が参加した。1月下旬には「社会主義とは何か?」の予定だ。

 支部は、クリスマス休暇を前にストライキ中のスターバックス従業員への支援を主導した。支部員は他に、次の選挙キャンペーンや地元でのBDS(ボイコット、投資撤退、制裁)キャンペーンの計画を開始しており、どちらも新メンバーの関心を集めている。

 スノホミッシュ郡支部の会員数は選挙前、約140人ほどだった。他のDSA支部同様、その多くは活動には参加せず、実質的に活動しているメンバーは30人ほどだ。選挙から1か月時点で、会員数は170人以上に急増した。これは、私が2022年に支部に入ってからは最大の増加である。この新加盟者らがどれだけ活動・運営に参加するようになってもらえるかが、今後の課題となる。

民主的体制をつくる

 私たちには、やるべきことがまだたくさんある。

 支部の主な課題は、積極的なキャンペーンを開始し、新しいメンバーを募集し、政治理論と組織化スキルを持ったメンバーに育成できるよう、民主的な組織体制をつくりあげることである。この体制を構築する上での主な障害は、活発に活動に参加するメンバーの少なさだった。

 しかし、このように新しいメンバーを募集していけば、スノホミッシュ郡で強力な政治組織を構築するための基礎を築き始めることができる。そして、全米で独立した社会主義政党を築くことが可能となる。



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