2025年01月17日 1854号

【未来への責任(411)/長生炭鉱遺骨発掘へ潜水調査】

 水中探検家の伊左治佳孝さんは沖縄本島の東にある南大東島で大規模な海底の鍾乳洞を見つけた。この鍾乳洞調査は12月19日に同行取材したNHKにより全国報道された。

 その伊左治さんに「自分しかできないし、他の方はしないだろう」と、山口県長生(ちょうせい)炭鉱の遺骨調査に自ら手を挙げていただけた。世界屈指のダイバー伊左治さんが、私たちの遺骨収容の取り組みを現実的なものにし、支えてくれている。

 当初、水中ドローンによる探索の方が安全ではないかと検討された。しかし調べていくと、内部はトロッコを敷設していたその残骸物などをくぐり前進しなければならず、陸上から線でつなぐドローンでは残骸物に絡まってしまう。透明度も低く適さない。もし遺骨を見つけても結局は人が入って収容することが必要である。

 別の専門家からも意見を求めた。海底での遺骨調査にとって、潜水調査がスタンダードであることや、安全対策のために呼吸を坑内に出さない器具リブリーザーを使って海底洞窟で5km入っていける記録もあるそうだ。それなら最初から人が入ったほうが良いという結論になった。

 潜水調査の安全確保は最重要課題である。何度も潜水に対して伊左治さんの要望を確認し、できることは財政面や準備を確実に実行している。リブリーザーを使った事前訓練への支援も含めて安全確保のためにできることをすべてしている。

 1月31日〜2月2日の3日間、市民の力で開けた長生炭鉱本坑道の2回目の潜水調査が行われる。潜水調査を見守りたいというご遺族の希望で今年の追悼式は2月1日になった。ご遺族が潜水調査に立ち会うのは初めてとなる。

 前回の潜水調査(本紙1848号)では命綱の関係で200m進み戻ってきたが、次は遺骨がある可能性の高い最深部の330mまで進む。遺骨は収容できる段階に入ってきた。ご遺族とは別に韓国から100名を超える応援の参加団も来る。

 1200万円を集めた第1次クラウドファンディングに続き、第2次クラファンを2月5日まで始めている。松の木で組んだだけの坑口が開いて空気に触れることで生じる急速な劣化を防ぐため坑口を補強する工事に400万円。遺骨の収容後のDNA鑑定・遺骨返還事業に200万円の計600万円を目指している。

 2025年を遺骨返還の年に。当会ホームページをご覧ください。

(長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 上田慶司)

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